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「穴場」だった江戸川区で不動産価格が上昇、船堀再開発が変える街と地場企業

2026.10.06 05:55 2026.10.05 18:58 企業
取材・文=山口伸
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財成グループ代表の秋田將宏氏

●この記事のポイント
東京都江戸川区では、都心の不動産価格高騰や交通利便性への評価を背景に住宅価格が上昇。特に2033年をめどに区役所移転・再開発が進む船堀では、大手デベロッパーの進出や賃料上昇もみられる。地域密着型の財成グループは、賃貸仲介市場の伸び悩みを見据え、売買仲介やリフォーム、新卒採用による人材育成を強化している。

 東京都江戸川区はかつて、マイホーム選びで見過ごされがちな地域だった。だが昨今の不動産価格高騰を背景に、比較的リーズナブルな地域として注目されている。そして江戸川区役所の移転先となる船堀エリアは不動産価格が著しく上昇した。そんな一之江・船堀エリアを中心に不動産事業を展開するのが財成グループだ。1986年に創業し、地域に根付いている。一方で引っ越し需要の低迷により、主力とする賃貸仲介事業は伸びしろが小さく、多角化を目指しているという。江戸川区の不動産事情と財成グループのあゆみを代表の秋田將宏氏に取材した。

●目次

不動産価格高騰や治安・治水の改善で注目される江戸川区

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「西高東低」と言われるように、都内の不動産価格は中央線沿いの西側ほど高く、下町の東側は比較的低い状況が続いてきた。特に江戸川区はかつて、洪水のイメージを持つ人も多く、他の地域より注目されにくい経緯がある。秋田氏によれば、治安面への評価の変化や治水対策などを背景に、江戸川区を選択肢に入れるファミリー層も増えているという。

「治安や水害を懸念する人も居ましたが、治安は改善し、行政も積極的に支援を手厚くしているため、ファミリー層に選ばれやすい地域になりました。昔のような大規模水害も近年では発生していません。不動産オーナーで90代の方は戦後間もない時に発生した水害を体験したそうですが、それより若い方は体験していないのが現状です」(秋田氏)

 報道でもよく言われるように近年では不動産価格が高騰し、都内では中古マンションさえ「億ション」の時代となった。比較的安い物件を求めて東側を選ぶファミリー層が増え、江戸川区も不動産価格が上昇している。

 2010年代前半には3,000~4,000万円台で購入できる建売も多く見られましたが、現在では6,000~7,000万円台の建売も多く、立地や条件によっては8,000万円を超えるものも珍しくありません。東京駅周辺や銀座までの所要時間は西側より短く、アクセスの良さが注目されています。賃貸物件では住民が居る場合、賃料の引き上げはなかなか難しいのですが、相場が上昇しているため納得してもらえるようになりました。特に空きが出た際は、賃料を2割引き上げて募集をかけることができる事例も出てきています」(同)

区役所移転に沸く船堀エリア

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 江戸川区役所は現在、新小岩駅から約1.3km南側に進んだ場所にある。区は2033年を目途に、役所を都営新宿線・船堀駅近くの場所に移転する予定だ。「船堀四丁目地区第一種市街地再開発事業」として、高さ99メートルの2棟が建設される。1棟が区役所本庁舎で、もう一方がマンションを中心とした複合施設だ。移転計画への期待も、船堀エリアの不動産市場を取り巻く一つの材料となっている。

「3年ほど前から船堀一帯の不動産価格が上昇しました。大手デベロッパーも分譲マンションの進出を強化しています。船堀駅近くでは賃料40万円と、以前では考えられなかった物件も現れました。役所の移転で行政の機能が集約され、知名度も向上すれば、船堀一帯の不動産開発はさらに進むでしょう」(同)

 駅周辺には中層のマンションが数多く並ぶが、駅近くでも戸建が密集する区画が存在する。比較的古い物件も多いだけに、開発の余地は大きいといえる。

多角化に向けて人材を強化したい

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 財成グループは1986年の創業以来、一之江・船堀エリアを中心に管理及び賃貸仲介事業を手がけてきた。主にオーナー所有の集合住宅を仲介・管理し、自社物件も保有する。しかし市場の変化を踏まえ、10年ほど前から他の事業も強化している。2017年に売買仲介の強化を目的として財成リアルティを創業。同社は現在、本社の一之江のほかにも店舗を持つ。多角化の目的について聞いてみた。

「賃料の相場が上昇しているため、既に住んでいる住民は引っ越しをしたがらない傾向があります。引っ越し需要が縮小しているので賃貸市場は伸びしろが小さいと判断し、売買仲介への注力も決めました。東京駅前に店舗を構えたのは、東京駅から江戸川区にかける一帯を強化する狙いがあります」(同)

 不動産開発が進むとはいえ、積極的に賃貸物件を増やせるわけではない。また、地域に密着している関係で、管理物件を他社から積極的に取っていくのも難しい。売買仲介やリフォームなど他の事業を強化し、収入源を増やしていく方針だ。

 なお、売買仲介強化に向けて人材を増やす必要があるという。だが人手不足が進み、23区内で中途採用の募集をかけても江戸川区は選ばれにくくなった。千葉県で募集をかけても難しいという。そこで次年度からは新卒採用を始める予定だ。

「新卒採用は単に人を確保するだけでなく、自社の価値観に合う人に育てるという目的もあります。これまで賃貸仲介事業を主に手がけてきたので、社員には『数万円の物件でも丁寧にやる』姿勢が定着しており、そこが売買仲介でも強みとして発揮できています。物件の金額に問わず丁寧な仕事ができる人材に育成したいです」(同)

 丁寧な姿勢はグーグルやSNS上における同社の高評価につながっているといえる。新卒を採用した後、最初の2年は賃貸仲介で経験を重ねて教育したいという。区役所の移転や賃貸市場の鈍化など、市場の変化が進む中、財成グループは人材強化で乗り越えようとしている。

(取材・文=山口伸)

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山口伸

山口伸/ライター

化学メーカーに勤めながら副業でライターをしている。本業は理系だが趣味で経済関係の本や 決算書を読み漁っており、得た知識を参考に経済関連の記事を執筆する。取得した資格は簿記 、ファイナンシャルプランナー。

X:@shin_yamaguchi_

公開:2026.10.06 05:55