四国最大の都市でも進む人口減少――管理1.8万戸の地場トップ不動産が仕掛ける「生き残り戦略」

●この記事のポイント
愛媛県松山市で管理1.8万戸超を誇る地場不動産大手の挑戦。人口減少による賃貸縮小を見据え、月1回マルシェを開くカフェ風店舗「売買物語」による実需売買の強化や、月間200万PVの外国人専門賃貸サイト「wagaya Japan」の東名阪展開を進める。AIシフトなど人材育成を軸に成長を図る。
日本エイジェントは愛媛県松山市を地場とする不動産業者だ。賃貸管理事業を主力とする。松山市では大手不動産会社の一つとして認識され、知名度も大きい。通常、不動産業者は同一地域に複数の店舗を展開し、ドミナント戦略を採ることが一般的だ。だが同社は東京・名古屋・大阪にも拠点を構えている。聞けば、外国人向け事業を強化しており、その一環で大都市圏に進出しているようだ。松山市は四国最大の人口を擁する都市でありながら、他の都市と同様に過疎化が予想されている。新規事業を開拓し、人口減少にどう立ち向かうのか。日本エイジェントの資産運用事業部 売買課 チーフマネージャー 東川大輔氏に同社の沿革と今後の戦略を聞いた。
●目次
松山市の不動産事情

検索エンジンで「松山市 大手不動産」「松山市 不動産屋」と検索すると、日本エイジェントが上位に出てくる。同社は1981年に創業し、主に賃貸物件の仲介・管理事業を展開している。これまでに、不動産の無人店舗「スタッフレスショップ」(ビジネスモデル特許取得)を全国展開した実績もある。賃貸物件の管理戸数は1万8000戸を超え、愛媛県内No.1を誇る。
松山市における競争事情について聞いてみた。
「全国展開しているような大手不動産業者はあまり進出しておらず、地場の業者同士で競争してきた歴史があります。弊社は歴史が長く、管理戸数が増えるにつれて知名度が向上しました。インターネットの普及時からいち早くSEO対策を進めてきたことも、効果を発揮しました。口コミも大切だと考えており、お客様からのご意見を頂いた場合はすぐに改善するよう努めています」(東川氏)
松山市の人口は約49万人で、高松市・高知市・徳島市よりも多く、四国では最も規模が大きい。市内の不動産相場について東川氏は次のように話す。
「新築戸建は平均3500万円でしたが、近年のコスト上昇により、5000万円くらいが必要な価格になっています。新築マンションでは二極化が進んでいます。1000~1500万円前後が人気ある一方、4000万円台の高価格物件も市場に出れば売れる市場です。高価な戸建に手が届かず、マンションや中古物件を選ぶ人も増えています」(同)
売買事業強化の一環で「マルシェ」も開催
四国トップの都市とはいえ、24年に50万人を下回り、既に人口減少が進んでいる。賃貸需要の縮小が見込まれる中、日本エイジェントは主力の賃貸仲介・管理事業に加え、売買仲介事業の強化にも乗り出している。これまで売買仲介では主に収益性物件を取り扱ってきたが、住宅や土地など、”実需”に沿った物件を強化したいという。その一環として昨年、中ノ川通り沿いに不動産売買専門店舗「売買物語」を開店した。一見するとカフェのような建物で、広場や屋上スペースを設けている。
「売買物語は気軽に来られる店舗をイメージしました。店舗では月一回を目処にマルシェを開催しています。地元のキッチンカーなどに出店してもらい、その一角で我々も不動産の相談に乗っています。周辺の住民やファミリー層がよく訪れますね。まずは名前を知ってもらうところからスタートです」(同)
日本エイジェントのように、不動産以外の部分で顧客接点を増やす取り組みは近年、各地の業者でも見られるようになった。中には不動産屋とカフェ、バーなどを併設する事業者もある。堅いイメージのある不動産屋に入りやすくする効果があるようだ。
「『wagaya Japan』では、全国を対象に外国人向けのお部屋探しサービスを提供しています。国内にいる外国人の方からのお問い合わせも多く、東京・大阪・名古屋にも店舗を展開しています。特に中部地方では名古屋へのお問い合わせが最も多く、名古屋出店の背景にもこうした需要があります。店舗には英語や中国語が話せるスタッフも在籍し、住まい探しをサポートしています」(東川氏)
「wagaya Japan」において、日本エイジェントはプラットフォーマーとして機能している。同サイトは外国人専門のお部屋探しサイトで、月間閲覧数は200万PVに上る。同サイトを通じて、日本で賃貸住宅を探す外国人と、外国人の入居が可能な物件を仲介するのが同社の役目だ。大家さん向けに外国人の入居に関する説明会も実施しており、同事業は社内でも成長が著しい事業の一つだ。
事業展開を支える人材育成にも注力
こうした事業展開を支える人材の育成にも力を入れている。現在の従業員数は約220人だ。同社では以前から中途採用よりも新卒採用に力を入れ、自社の価値観に合う人材を育ててきた。OJTだけではなく座学も充実させている。毎年の「agent Awards」では、優れた取り組みを表彰し、従業員のモチベーションアップに努めている。
「アワードは結婚式場を借りて行います。毎年定めているテーマに関連した取り組みをプレゼンしてもらい、良い取り組みをした従業員には賞金10万円を与える大会です。今年のテーマは『AIシフト』になっています」(同)
日本エイジェントは、買取再販・リフォームの強化といった同一店舗内での「サービスの拡充」を検討しているという。これまでに培ってきた顧客接点や人材育成のノウハウを活用し、松山市の人口減少を乗り越える構えだ。
(取材・文=山口伸)











