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家庭に眠る91兆円、市場に出ているのは3.6%…コメ兵HDがGMOあおぞらネット銀行と組む狙い

2026.10.25 06:00 2026.10.25 00:52 企業
文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=永田由紀/流通コンサルタント
家庭に眠る91兆円、市場に出ているのは3.6%…コメ兵HDがGMOあおぞらネット銀行と組む狙いの画像1
KOMEHYO本店本館(「Wikipedia」より)

●この記事のポイント
ブランドリユース大手のコメ兵HDは2026年10月、GMOあおぞらネット銀行と、BaaSを活用した「リユース×金融」の新サービスを共同で検討する基本合意を結んだ。売上高2,217億円と好調な一方、家庭に眠る約91兆円の「かくれ資産」のうち、実際に売買されているのは3.6%にとどまる。銀行と組む狙いと課題を一次資料から読み解く。

 押し入れの奥にしまったままのバッグや、もう着けなくなった腕時計。売れば値がつくと分かっていても、店に持ち込むところまではなかなか行かない。多くの人にとって「モノを売る」は、まだ少し腰の重い用事だ。

 そのハードルを金融の仕組みで下げられないか。2026年10月20日、ブランドリユース大手のコメ兵ホールディングス(以下、コメ兵HD)とGMOあおぞらネット銀行は、BaaS(Banking as a Service)を活用した「リユースと金融を融合した新サービス」の共同検討に関する基本合意書を締結したと発表した(締結日は10月19日)。

 業績が伸び続けているさなかに、なぜ銀行と組むのか。両社の公表資料をもとに、狙いと課題を整理したい。

●目次

売上2,217億円、四半期でも過去最高を更新

 まず足元の数字を確認しておく。コメ兵HDの2026年3月期連結決算は、売上高2,217億700万円(前期比39.4%増)、営業利益92億8,800万円(同50.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益54億8,800万円(同14.9%増)だった。売上高は初めて2,000億円台に乗った。

 勢いは今期も続いている。2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は売上高658億2,000万円(前年同期比42.7%増)、営業利益35億3,300万円(同約4倍)。売上高と個人買取額はいずれも四半期ベースで過去最高となった。10月20日に公表された月次速報でも、ブランド・ファッション事業の上期累計売上高は前年同期比133.9%と高い伸びを保っている。

 会社側は好調の要因として、継続的な出店と既存店の買取好調、そして歴史的な金相場の高騰を挙げる。ここで注目したいのは中身だ。第1四半期の決算説明資料によると、ブランド・ファッション事業で増えた個人買取額のうち約8割は既存店によるものだった。新店を増やして数字を積み上げただけではない、ということになる。

 ブランドリユースでは、利益の源泉は「仕入れ」、つまり個人からの買取にある。その買取を支えるのが真贋と価値を見極める力だ。同社は1947年創業。蓄積した査定ノウハウをAIにも落とし込み、ブランドバッグの真贋判定ではブランドカバー率8割、判定率99%を掲げ、グループ会社10社に導入している(2026年3月期決算説明資料)。

 店舗網は2026年6月末時点で国内304店、海外43店(6カ国・地域)の計347店。個人向けの店舗・ECに加え、業者向けのオークション事業も持ち、第1四半期のオークション流通総額は約304億円に上る。買い取ったモノを、利益率の高い小売と業者向けの法人販売に振り分けられる構造が、相場変動への耐性にもつながっている。5月に公表した中期経営計画では、2029年3月期に売上高3,100億円、営業利益145億円(新規M&Aは含まない)を目標に置く。

「既存店の買取が伸びているのは、店舗網と査定への信頼が効いている証拠だとみています。金相場の追い風だけでは説明しきれません。ただ、相場に連動する部分は反動も起こり得る。今後は買取の件数や新規客の推移が、成長の持続性を測るうえで大事になるでしょう」(流通コンサルタント・永田由紀氏)

「91兆円」と「3.6%」――なぜ銀行なのか

 これだけ好調なら、今のやり方を伸ばせばよいようにも見える。それでも銀行と組む理由は、市場の形を見るとわかりやすい。

 リユース経済新聞社の推計では、国内リユース市場は2024年で3兆2,628億円。コメ兵HDは2040年に5兆円規模へ拡大するとの見通しを資料で示している。一方で、メルカリの調査は、家庭に眠る不要品などの「かくれ資産」を約91兆円と推計する。コメ兵HDの説明資料は、このうち実際に売買されている「顕在市場」は3.6%にとどまると整理している。

 つまり、伸びしろの大半は店の外――各家庭のクローゼットの中にある。店舗を増やし、査定の精度を上げるだけでは、「そもそも売ろうと思っていない人」には届きにくい。ここに金融を組み合わせる意味がある。

 BaaSとは、銀行が口座や振込、決済といった機能をAPIで「部品」として提供し、金融以外の企業が自社のサービスに組み込めるようにする仕組みだ。利用者から見れば、普段使うアプリの中で銀行の機能が動いている状態になる。GMOあおぞらネット銀行は2018年7月の開業以来この分野に力を入れており、BaaSの契約数は累計1,401件(2026年9月末)に達する。

 今回の発表で示されたのは、「モノの価値を適正に評価し、経済的価値のある資産として活用できるエコシステム」を目指すという方向性だ。対象には、店舗やECを使う個人顧客と、法人サービスやオークションを使う法人顧客の双方を想定。必要な許認可・ライセンスの取得も併せて検討し、サービスは段階的に提供するとしている。具体的な中身や開始時期は、現時点では公表されていない。

「組込型金融の価値は、利用者が『銀行を使っている』と意識せずに済むことです。売却から入金、その先の支払いや貯蓄までが一つの流れになれば、売ることの心理的な重さはかなり変わります。ただし組み込む側の企業にも、本人確認や不正対策で金融機関と同じ水準の運用が求められます」(同)

「処分」から「資産管理」へ――考えられる方向と論点

 ここからは、公表内容を踏まえた筆者なりの整理である。両社が具体的な機能を発表したわけではない点は、あらかじめ断っておく。

 これまでのリユースは、引っ越しや衣替えのついでに不要品を手放す「一回きりの処分」になりがちだった。BaaSを使えば、その位置づけを変える余地がある。たとえば買取代金の受け取りを口座に直結させることや、手元の品の参考価格を把握できるようにすることは、発表にある「資産として活用できるエコシステム」の延長線上にある。自宅のバッグや時計を「いくらになるか分かっている資産」として捉えられれば、売ることは特別な用事ではなく、家計や資産形成の中の一つの選択肢に近づく。

 法人側の影響も小さくない。コメ兵HDのオークションには多くのリユース事業者が参加している。仕入れ代金の支払いや入金管理は中小の事業者にとって日々の負担であり、法人口座に強みを持つGMOあおぞらネット銀行との連携は、この領域でも工夫の余地がありそうだ。

 一方で、乗り越えるべき課題もはっきりしている。第一に、ブランド品や貴金属の価格は相場で変わる。「資産」として見せるなら、その数字が確定した買取額なのか、参考値なのかを利用者が取り違えない設計が要る。第二に、金融機能を扱う以上、個人情報とセキュリティへの要求水準は一段上がる。コメ兵HDは10月23日、外部委託先のEC管理システムへの不正アクセスにより、ECでの注文情報473件が漏えいしたと公表し、調査と再発防止に取り組んでいる。委託先を含めた管理体制をどう示すかは、金融連携を進めるうえでも利用者が注目する点になるだろう。

「モノの評価額を資産のように示す場合、それが確定価格ではないことを利用者が誤解しない表示が欠かせません。今回の発表で許認可の取得検討が明記されているのは、両社が制度面の整理を前提に設計しようとしていることの表れだと受け止めています」(同)

自前にこだわらない老舗と、循環型経済の「経済合理性」

 ここ数年のコメ兵HDは動きが速い。2026年だけを見ても、ガレージバンクの子会社化(7月)、インドネシアやマカオ、英国での会社設立と、国内外で手を打ち続けている。そのなかで金融については、自社でつくるのではなく専門の銀行と組む道を選んだ。

 合理的な判断だろう。金融は規制業種であり、システムも本人確認も、ゼロから整えれば時間とコストがかかる。一方で「このバッグにいくらの価値があるか」を見極める力は、銀行にはない。互いに持たないものを持ち寄る形であり、非金融企業が他社の金融機能を組み込んで顧客体験を広げる、一つの典型例になり得る。

 もう一つ、この取り組みは循環型経済という観点からも注目してよい。「モノを大切に」という呼びかけだけでは、人はなかなか動かない。売る人にとって手間が少なく、お金の面でも得をしたと感じられる仕組みがあって初めて、モノは家の中から市場に戻ってくる。91兆円のうちの3.6%という数字を動かせるかどうかは、結局その「使い勝手」にかかっている。

基本合意の先に何を見るべきか

 今回はあくまで基本合意の段階であり、サービスの姿も開始時期もまだ決まっていない。今後の焦点は大きく三つある。どのような許認可の形をとるのか。個人向けと法人向けのどちらから始めるのか。そして、これまでリユースを使ってこなかった層に実際に届くのか。最後の点は、将来の新規買取客数などで確かめられるはずだ。

 業績が好調なうちに次の成長の種をまくのは、経営の王道でもある。創業79年の「目利き」と、ネット銀行の「仕組み」がどうかみ合うのか。家の中に眠るモノの流れを変えられるのか。具体的なサービス発表を待ちたい。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=永田由紀/流通コンサルタント)

【主な参照データ・出典】
GMOあおぞらネット銀行 プレスリリース(2026年10月20日)
コメ兵HD 2026年3月期 決算短信
コメ兵HD 2026年3月期 決算説明資料
コメ兵HD 2027年3月期 第1四半期 決算短信
コメ兵HD 2027年3月期 第1四半期 決算説明資料
コメ兵HD ブランド・ファッション事業 9月度月次(2026年10月20日)
コメ兵HD 外部システムへの不正アクセスに関するお知らせ(2026年10月23日)
コメ兵HD ニュースリリース一覧

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公開:2026.10.25 06:00