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出前館は8期連続赤字、マクドナルドは最高益…明暗を分けた「顧客との接点」の持ち方

2026.10.20 06:00 2026.10.19 23:09 企業
文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=杉田誠/外食産業コンサルタント

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●この記事のポイント
出前館の2026年8月期は売上高390億円とほぼ横ばいながら、配達員報酬の増加で最終赤字82億円と8期連続の赤字に。一方、注文の約7割がデジタル経由の日本マクドナルドや、うどん弁当が累計5000万食を超えた丸亀製麺のトリドールは過去最高業績を更新した。ドミノ・ピザの172店閉店も踏まえ、自社チャネル戦略が機能する条件を探る。

 出前館が10月15日に発表した2026年8月期の連結決算は、最終損益が82億4600万円の赤字だった。前期の49億7100万円から赤字幅が広がり、最終赤字は8期連続になる。売上高は390億5700万円で、前期比1.7%減にとどまった。一方で売上原価は約351億円から約384億円に増え、売上総利益は約46億円から約6億円まで縮んだ。日本経済新聞は、配達員への報酬増が響いたと報じている。

 数字を見る限り、売上はほとんど落ちていない。減ったのは「1件の注文から手元に残る額」のほうだ。同社は26年3月から、店頭と同じ価格で頼める「お店価格」や送料無料の対象を広げた。その結果、6~8月の注文数は前年同期比8%増の約1605万件まで戻っている。注文は戻ったものの、それを運ぶ配達員を確保するコストが先に膨らんだ。

 市場全体を見ても楽ではない。サカーナ・ジャパンの調べでは、国内のフードデリバリー市場は23年の8603億円から24年に8078億円へ縮んだ。25年は8240億円と小幅に持ち直したばかりだ。そこへ韓国クーパン系の「ロケットナウ」が送料・サービス料無料を掲げて参入した。ウォルトは26年3月に日本から撤退し、KDDI傘下のmenuも8月にサービス終了を決めている。

 加盟店の側にも事情がある。プラットフォームに払う手数料は契約形態によって異なるが、デリバリー注文では売上の3割前後になることが珍しくない。客単価の低い業態では、注文が増えるほど利益が薄くなることもある。プラットフォームも加盟店も利益を出しにくい構造が、少しずつ表に出てきた格好だ。

 では、デリバリーやテイクアウトはもう儲からないのか。そうとは言い切れない。外部プラットフォームを使いながらも顧客との接点を自社側に引き寄せ、業績を伸ばしている外食チェーンがあるからだ。両者を分けているのは何か。

●目次

マクドナルド――プラットフォームに「預けきらない」

 日本マクドナルドHDの25年12月期は、全店売上高が8886億円(前期比7.2%増)、純利益が339億円(同6.1%増)で、どちらも過去最高だった。26年1~6月も既存店売上高は5.9%増え、43四半期連続のプラスが続いている。

 目を引くのは注文経路の変化だ。トーマス・コウ社長兼CEOは8月の決算説明会で、モバイルオーダー、デリバリー、店内タッチパネル経由の注文が約7割に達したと説明した。公式アプリの会員は約2600万人いる。

 同社はウーバーイーツや出前館への出店をやめたわけではない。公式アプリで頼む「マックデリバリー」と外部サービスを並行して使っている。違いは、クーポンやポイントといった「また来る理由」を自社アプリの側に置いていることだ。新しい客との出会いは外部に任せても、2回目以降の関係は自社で持つ。この分担によって、手数料負担の比重は下がりやすくなる。

 もっとも、デジタル化にはコストもかかる。店内に客がいないのに注文だけが入る「見えない注文」が増えたため、同社は厨房設備の増強やデリバリー受け渡しスペースの拡張を進めてきた。顧客接点を握るぶん、店舗にかかる負荷は自分で引き受けているわけだ。

「プラットフォームは集客の装置としては優秀ですが、顧客データは基本的に店側には残りません。外部経由で来たお客さんを自社アプリへ移す導線を、どれだけ地道に作り込めるかで差がつきます」(外食産業コンサルタント・杉田誠氏)

宅配ピザ――自前の配送網は武器にも重荷にもなる

 自社の配達網を持つ宅配ピザは、デリバリーの時代には有利に見える。だが実際には明暗が分かれた。

 ドミノ・ピザは25年2月、親会社の豪ドミノ・ピザ・エンタープライズが、国内店舗の約2割にあたる172店を閉める方針を発表した。26年6月には看板だった「持ち帰り半額」を終え、宅配価格を平均約600円下げた。あわせて持ち帰りは、宅配価格の30%引きに改めている。自分で取りに来る客と配達コストがかかる客の価格差を縮めるのが狙いだと報じられている。

 自前の配達員と車両は、注文が多いうちは速さと品質を守る武器になる。だが注文が減れば、そのまま固定費として残ってしまう。コロナ禍に広げた店舗網と配送網を見直している段階と見るのが妥当だろう。

 ピザハットは対照的に、小型店と店頭受け取りを軸に出店を続け、24年4月に国内600店舗に達した。宅配網は持ちつつ持ち帰りの比重を高め、1店あたりの投資と配送の負担を軽くする設計だ。同じ「自社配送」でも、どこまで自前で抱えるかの判断で結果が変わっている。

テイクアウト――配達をやめると「手間」は客側に移る

 配達コストそのものを生まない選択もある。丸亀製麺の「丸亀うどん弁当」は21年4月の発売以降、25年9月時点で累計5000万食を超えた。麺がのびる、汁がこぼれるといった麺類の持ち帰りの弱点を、弁当という形で避けた商品設計だ。トリドールHDの26年3月期は、売上収益2787億円、事業利益215億円で、ともに過去最高を更新した。

 とはいえ、テイクアウトにも限界はある。同社の27年3月期第1四半期は、売上収益が第1四半期として過去最高だった。それでも人件費などが増え、営業利益は34.3%減った。配達費がかからなくても、店でつくる人の人件費からは逃れられない。

 業態全体で見ても同じことがいえる。日本フードサービス協会の外食産業市場動向調査によると、25年の「持ち帰り米飯/回転寿司」は売上高が前年比102.9%だった一方、客数は96.0%と前年を下回った。外食全体の客数は102.9%だったから、持ち帰り中心なら安泰という状況ではない。値上げで単価を確保しながら、来店の頻度をどう保つかが問われている。

「テイクアウトは配送費がかからない分、利益は残しやすい。ただ、お客さんに“取りに行く手間”をお願いしている以上、予約や支払いのしやすさ、受け取りの待ち時間といった部分の出来が、そのまま来店頻度に返ってきます」(同)

伸びている企業に共通する3つの条件

 ここまでの事例から、業種を問わず応用できる条件を3つ挙げておく。

 1つ目は、「2回目の接点」を自社で持っていることだ。外部プラットフォームは、新しい客を連れてくることには向いている。問題になるのは、再来店の動機まで丸ごと預けてしまうことだ。

 2つ目は、配達コストを誰が負担するかを決めていることだ。手数料を払ってでも届けてほしい客と、安く済ませたいから取りに行く客とでは、求めているものが違う。両者を同じ値付けで扱うと、どちらかに無理が出る。ドミノ・ピザの価格改定は、この線引きを価格に表した例と読める。

 3つ目は、購買データを次の注文につなげていることだ。購買履歴に合わせたクーポン配信がその典型だが、アプリの開発・運営費を回収できるだけの会員規模が要る。中小の店が大手と同じ仕組みを持つのは現実的ではない。

「LTV(顧客生涯価値)の発想自体は規模を問いません。中小なら、LINE公式アカウントや会員カードのような低コストの手段で常連との接点を持っておくだけでも、外部への依存度はかなり変わります」(同)

「誰の上で商売をするか」という問い

 出前館の赤字は、デリバリーの需要が消えたことを意味しない。実際、注文数は回復している。問われているのは、配達という人手のかかる工程のコストを、プラットフォーム、店、利用者、配達員がそれぞれどれだけ負担するかという分担の問題だ。出前館は26年9~11月期の売上高を110億~115億円と見込むが、通期の利益見通しは示していない。手数料、配達員報酬、利用者への値引きの釣り合いをどこで取るのか、模索はしばらく続くだろう。

 外食チェーンにとって、プラットフォームは使うか使わないかの二択ではない。どの客との関係を外に預け、どこから先を自社で持つかという線引きの問題である。今後は、自社アプリとデータに投資を続ける大手と、プラットフォームの集客力を使う中小という二層の構図がはっきりしていくだろう。ただ、後者が必ず不利になるとは限らない。手数料を織り込んだ価格設計やメニューの絞り込みで、採算を取る道もある。

 外部の販路に乗れば、商品は早く売れる。では、そのとき客との関係は誰の手元に残るのか。外食に限らず、ECモールやSNS広告に集客を頼る企業にもそのまま当てはまる問いだ。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=杉田誠/外食産業コンサルタント)

【主な参照データ・出典】
日本経済新聞(出前館決算)(ドミノ・ピザ172店閉店)
yuku.co.jp(出前館決算の数値)
note(出前館の注文数・お店価格)
集英社オンライン(市場規模、menu・Wolt撤退)
流通ニュース(マクドナルド25年12月期)
日本食糧新聞(マクドナルドのデジタル注文比率)(ドミノ・ピザ価格改定)
ITmedia ビジネスオンライン(マクドナルドの店舗投資)
ピザハット(600店舗到達)
PR TIMES(丸亀うどん弁当5000万食)
流通ニュース(トリドール第1四半期)
FoodWatchJapan(日本フードサービス協会の25年年間データ)

BusinessJournal編集部

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公開:2026.10.20 06:00