●飲食店からみる、ブランド豚を扱うメリット
では飲食店側にとって、ブランド豚を扱うのにはどのようなメリットがあるのだろうか。大阪市にある豚肉専門店「豚しゃぶとせいろ蒸し専門店 HARU 本町邸」の店長は次のように話す。
「当店は鹿児島県の『さくら農場』と専用契約を結ばせていただき、『茶美豚』をはじめ、『芳寿豚』『蔵尾ポーク』『やんばる島豚』『イベリコ豚』を仕入れています。当店では一日にブランド豚肉を約10kg使うんですが、専用契約を結ぶことによって通常の卸価格よりも1kg約1000円はリーズナブルに仕入れられるんです。また、産地直送の確実なラインを確保し、無駄な冷凍や輸送残置による鮮度落ちも非常に少なくできるので安心感があります。社会全体が敏感になっている食品偽装から遠のけるというのも、大きなメリットですね」
農家と直結したパイプを持つことが、仕入れ値を抑えることにも一役買い、顧客からの信頼にもつながるということだ。生産コスト、流通金額が割高になるが、その面を補って余りある魅力がブランド豚にあるということだろう。
以上みてきたように、ブランド豚への需要は当分増えそうであるが、今後、ブランド豚の品種は増加していくのだろうか?
「いえ、これ以上、品種が大きく増えていくことはないのではと考えています。現時点で、すでにブランド豚は増えすぎてしまっており、ブランド同士の争いが非常に熾烈になっています。ですので、今畜産家が力を入れていくのは、新種の開発ではなく、既存種の改良による品質向上だと思います」(前出の鹿児島県経済連・養豚課担当者)
現時点で、すでに品種は飽和状態ということだが、それだけブランド豚という食材が浸透・定着したことの裏返しともいえる。既存のブランド豚が農家の企業努力により、一層美味しく、リーズナブルに流通する流れができるのであれば、消費者としては大歓迎の傾向だろう。
(文=東賢志/A4studio)