東京相和銀行の受け皿になったのは米投資ファンド、ローンスターが設立した東京スター銀行。今回、東京スター銀行の株主であるローンスターや新生銀行、仏金融大手のクレディ・アグリコルなどが中国信託商業銀行による買収に賛同する意思を示し、これらの株主が保有する普通株式のほぼすべてを売却することになった。買収額は500億円程度とみられている。
海外企業による日本の銀行の買収は、米リップルウッドによる新生銀行(旧・日本長期信用銀行)や、米サーベラスによるあおぞら銀行(旧・日本債券信用銀行)、米ローンスターによる東京スター銀行(旧・東京相和銀行)など外資系ファンドによるものが主流だったが、海外の銀行による買収は今回の東京スター銀行買収が初めてとなる。
中国信託商業銀行は預金量4兆円超と台湾民間銀行で最大の規模を持ち、台湾のほか中国本土、インド、インドネシア、ベトナムなどアジア各地に進出。日本では東京都・港区に支店を構えており、大阪市、名古屋市、福岡市などにも店舗がある東京スター銀行の買収で、日本での業務を一気に拡大する計画だ。急成長するアジアの銀行が、日本で勢力を拡大する象徴的なケースとなる。
●東京スター銀行、混迷の歴史
東京スター銀行は05年10月、1株43万円で東証1部に上場した際、ローンスターは保有株式の30%を売却し900億円の現金を手にした。さらに08年1月、残りの保有株(発行済み株式の68%)を1株36万円で、国内大手投資ファンド、アドバンテッジパートナーズが実施した株式公開買い付け(TOB)に応じて売却した。売却額は1700億円。ローンスターは400億円で手に入れた東京スター株式を合わせて2600億円で売却。出資金を差し引いた売却益の総額は2200億円に達した。TOBが成立した東京スター株式は08年7月、上場廃止となった。再上場してからわずか2年9カ月だった。
当時、アドバンテッジパートナーズにTOB資金を出したのは新生銀行、あおぞら銀行、クレディ・アグリコルなどの外資系金融機関である。各社は東京スターの再々上場によるハイリターンを期待していた。東京スターの再々上場は早くて11年、遅くとも13年といわれたが、08年のリーマンショックによる金融危機で東京スター銀の業績が悪化し、その見通しが狂った。
TOB資金を融資した新生銀行などの銀行団とアドバンテッジパートナーズは東京スター株の配当を利払いに充てる契約をしていたが、東京スター銀行は10年3月期に27億円の最終赤字に転落。11年同期も46億円の赤字となり配当ができなくなり、アドバンテッジパートナーズから銀行への利払いが滞った。そのため、アドバンテッジパートナーズは11年5月、融資の担保としていた東京スター株式を銀行団へ譲渡した。銀行団はこの株を特別目的会社に移し替え、特別目的会社にはローンスター、新生銀行、あおぞら銀行、クレディ・アグリコルなどが参加した。これらの企業が今回、東京スター銀行の身売りに同意したことになる。
(文=編集部)