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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏(5月29日)

渋谷マルキューとセシル、20年目の試練を乗り越えられるか?商品力と販売力復活のカギ

文=高井尚之/経済ジャーナリスト

●「原点」はどこか?

 ビジネスの現場では、よく「悩んだ時は原点に立ち返れ」といわれる。だが、この言葉には落とし穴も潜む。「原点はどこか」を精査して行動しないと、道を誤ってしまう恐れがあるからだ。

 木村氏は「セシルブランドが立ち返る原点=ギャルではありません。ブレイクして20年近く、もはや渋谷の街にギャルはいなくなりましたから」と語り、「店に来店されるお客様一人ひとりを見ること。その一方でマーケット全体の変化やトレンドを見ること」の2点を見るべきポイントとして挙げる。

 セシルマクビーがここまで成長した理由には、お客に近い年代の女性店員に徹底して任せる姿勢もあった。店内を見ると、茶髪に派手なメークで接客するスタッフが目立つ。それもそのはず、彼女たちのほとんどは、もともとセシルの常連客だった。元顧客経験を踏まえて、心に届くような着こなし提案をする。

 流行のトレンド、着心地のよさ、価格と価値のバランス、一定の品質という「商品力」に加えた、この「販売力」がセシルブランドの人気を支えてきた。

 ブランド人気が始まって20年近くたち、今後は「ギャル卒業生」向けも含めた中年女性への訴求も欠かせない。これまでにコストパフォーマンスを重視する主婦層をカジュアル服で取り込んできたが、今後は外資系ファストブランドとのさらなる戦いが待っている。

 セシルマクビーの販売スタッフは、「見た目は派手だけど中身は真面目」という人が多い。自社ブランドをきれいに着こなすため、ヒール高の“厚底シューズ”で働く人もいる。

 来店客と真摯に向き合い、商品構成と接客手法に、さらに厚みを持たせることができれば、マルキュー系の逆襲も成し遂げられるはずだ。

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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