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風俗業界で英語教育過熱?なぜ外国人観光客受け入れ加速?東京五輪で岐路に

取材・文=丸山佑介/ジャーナリスト
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 また、吉原などの高級ソープランドも、積極的に外国人客を受け入れている。Aさんは、個人的に依頼してきた金持ちのアジア人を、1回のプレイが5万円以上の高級ソープランドに連れて行くこともあるといい、ガイドにとってもメリットがあると語る。

「複数のオプションがついて総額10万円になっても軽々支払ってくれる。はっきり言って上客です。案内したガイドにも1人当たり1万円の紹介料が入ります」

 しかも金持ちのアジア人たちは諸外国で遊び慣れているため、無理な要求もせずに紳士的に振る舞うので、店にとっても願ったりかなったりだという。

 これらの風俗店では、語学に堪能なガイドが詳細なルールを説明するので、店側に英語力は不要なことも多い。しかし、個人で来店する客に対しては、受付など店のスタッフに英語力が求められることもある。

●風俗嬢にも英語力が必要

 しかし、業態によっては風俗嬢自身に英語力が要求されることもある。特に英語が必要な風俗の業態は「デリバリー」(派遣型風俗)である。

 派遣型の風俗の場合、受付を通じた電話でのやりとりを経て、風俗嬢が客とマン・ツー・マンで対応しなければならない。だが、覚えるべき英語はそれほど多くない。実際に使われている用語をいくつか紹介しよう。

「take off clothes(服を脱ぐ)」「harder(強く)」「softer(弱く)」「wash(洗う)」「painful(痛い)」「prohibit(禁止)」「change(おつり)」「extend(延長)」「make cum(イク)」

 このように見てみると、単語ばかりで英会話とはイメージが異なるが、外国人にしてみれば単語レベルのコミュニケーションで十分なのだという。あるデリバリーヘルス(デリヘル)を利用した外国人は「地元にいるみたいに話されると、かえって気を使うから、片言で十分」と語る。

 このようなデリヘルは、今のところアジア系外国人よりも欧米人が多く利用している。それはデリヘル店が、欧米人が多く活用するインターネット掲示板で宣伝したり、ホームページを英語化するなど、欧米人の誘い込みをしているからである。しかも、表向きは出張マッサージとして看板を掲げている。そうすることで競合する風俗店とは一線を画し、さらに取り締まりから逃れやすくしている。

 欧米人をターゲットにする理由は、海外出張で何度も日本を訪れるビジネスパーソンが多いからだという。その意味では、今後アジア系企業の日本進出が増えるに従って、アジア人ビジネスパーソンも狙う風俗店は増えていくだろう。ビジネスパーソンたちは、自分の体験を出張族同士で共有することが多く、お店にしてみれば口コミ効果も期待できるのだ。実際、利用者からの紹介を受けて店に連絡してくる外国人客も多いとのことで、彼らにとって単語レベルのコミュニケーションが心地よいことを裏付けているともいえるだろう。

●風俗業界の「2020年問題」

 風俗業界が外国人受け入れに積極的になっているのは、売上を伸ばすためだけではなく、変革を模索しているからではないだろうか。

 1964年に開催された東京オリンピックの際には、社会風紀を取り締まる動きが強まり、ホームレス、男娼、連れ込み宿など、さまざまなアンダーグラウンド要素が東京から排除された。

 20年の東京オリンピックでも、取り締まりが強化されるといわれている。特に風俗業界に向けられる目はいっそう厳しいものになるだろう。業界では「風俗2020年問題」と呼んで警戒しており、経営者たちは岐路に立たされている。

 廃業、業態変更、はたまたまったく別の道を模索するか……。生き残りをかけた風俗業界がどのような変化を見せるのか、目が離せないところだ。
(取材・文=丸山佑介/ジャーナリスト)

●丸山佑介/ジャーナリスト
アジア親日の履歴書』『海外旅行最強ナビ』(ともに辰巳出版)などの著書がある。

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