シャープは12年3月期、3760億円の最終赤字に転落し、経営責任を取り片山氏は社長を辞任、会長に退いた。13年には取締役も退任してフェロー(技術顧問)になっていた。短期間でトップブランドに駆け上がった成功体験があまりにも強烈すぎ、核となるデバイスを常に複数持つ「スパイラル戦略」というシャープの伝統的手法を無視し、液晶事業一本への依存が高まったことが失敗の原因といわれている。
町田氏と片山氏はシャープを倒産寸前に追い込んだとして社内外から批判を集めたが、片山氏は液晶の技術者としては高く評価されていた。永守氏は技術陣を取りまとめて液晶をシャープの事業の柱に育てた片山氏の手腕を買い、技術のトップに招聘した。
●集団指導体制への布石か
日本電産は15年3月期の連結業績予想を上方修正した。売上高は前期比9.7%増の9600億円(従来予想9500億円)、本業の儲けを示す営業利益は同23.4%増の1050億円(同1000億円)とした。車載用を中心に一般モーター事業へのシフトが業績に寄与した。同社はパソコンに使われるハードディスク駆動装置(HDD)モーターで世界シェアの80%を握ってきたが、HDDを搭載しないスマートフォンやタブレット端末の急速な普及で小型精密モーターの需要が急減、価格も大きく下がった。そのため車載用モーターを軸とする事業構造へと転換を進めてきた。
14年4~6月期、主力のHDDなど精密モーターの売上高は898億円。車載用など一般モーターが1102億円で逆転した。中でも車載用モーターの売上高は468億円(1~3月期は355億円)と堅調に推移した。永守社長は「自動車に電子部品がたくさん載る時代が来た。この分野が成長するだろうという自信は確信に変わった」と述べ、車載用事業の拡大に手応えを感じている。
車載事業を強化するために人材もスカウトした。13年6月に、米ゼネラル・エレクトリック(GE)系の金融子会社社長や、日産自動車系の自動車部品メーカー、カルソニックカンセイの社長を務めた呉文精氏(58)を副社長執行役員に迎え、車載事業本部を任せた。呉氏は現在、代表取締役副社長兼最高執行責任者(COO)を務め、次期社長の最有力候補とされる。永守社長は世襲には否定的で、2人の息子はすでに別の企業のトップに就いている。片山氏を迎え入れることで、「ポスト永守」の集団指導体制の布陣が整ったと見る向きもある。
来年6月の株主総会で片山氏は代表権を持つ。代表取締役は永守氏、片山氏、呉氏と、創業メンバーである副社長(社長補佐)の小部博志氏(65)の4人体制となる。創業者である永守氏が1~2年以内にトップの座を譲る可能性は低いとみられており、片山氏と呉氏が永守氏の両輪となって支える体制が当面、続くことになる。
(文=編集部)