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「ダイヤモンド」vs「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(8月第5週)

アップルも認めた!? 遅れる日本の携帯電磁波リスク予防

post_616.jpg(左)「週刊東洋経済 9/1号」 (右)「週刊ダイヤモンド 9/1号」
●「iPhone5」発売目前、スマフォで腫瘍リスクが増大!?

「週刊東洋経済 9/1号」の大特集は『スマフォ通信料 ここまで下がる』。9月以降、日本にスマートフォンブームが吹き荒れる。9月21日にiPhoneの新機種、いわゆる「iPhone5」が発売されるためだ。グーグルの「ネクサス7」、マイクロソフトの「サーフェス」など、近い将来ノートパソコンにとって代わると目されているタブレット端末も続々発売になる見通しだ。

 2011年の国内スマフォ出荷台数は、前年の約4倍に当たる2010万台。携帯端末全体に占めるスマフォ比率は5割を超えた。「あっという間にスマフォ5000万台時代がくる」というのが業界関係者の一致した見方だという。

「スマフォの通信料は高い」といわれているが、たしかに、従来型の携帯電話に比べて毎月1600~1700円の負担増になるといわれている。4人家族で考えれば、年間約8万円の支出増だ。そんななか、NTTドコモが超高速の次世代通信規格LTEでパケット定額料4935円の業界最安プランを発表した。ソフトバンクはLTEの通信料を「5985円」と、これまでのドコモの価格と並べてきた。今回の特集では価格競争も激しくなるなか、賢いスマフォの使い方をまとめている。  

・賢い使い方1は「(ドコモLTE最安値発表で)、ユーザーの7割は『ドコモステイ(ドコモにとどまる)』が賢明」
・賢い使い方2は「(ソフトバンク・プラチナバンド開始だが)都心での『つながりにくさ』は変わらない」
・賢い使い方3は「(ロングユーザーは)キャリアを乗り換えた方が安上がり」  
・賢い使い方4は「格安SIMカードで基本料は0円まで落とせる」
・賢い使い方5は「中古端末(白ロム)という選択肢も」
・賢い使い方6は「モバイルルーターは『WiMAX』が最強」
・賢い使い方7は「通話料が無料に (スカイプなどの無料通話)『VoIP』を完全活用」などといった具合だ。

 ここまでであれば、「日経トレンディ」(日経BP)や「DIME (ダイム)」(小学館)などの生活実用情報誌と変わらないが、「東洋経済」らしさが発揮されたのは「ゆれる電磁波問題 携帯電話使用にひそむ危険」という記事も掲載している点だ。

 iPhone4Sの説明書には次のような注意文が書かれているのをご存知だろうか。

「高周波エネルギーへの暴露について不安がある場合にはiPhoneの使用時間をできるだけ減らし」「できるだけ体から離して持ってください」。高周波エネルギーとは電磁波のこと。この電磁波の危険性がささやかれているために、メーカー側も注意喚起を行うようになったのだ。

 電磁波の健康への危険性として調査結果が出ているのは、脳腫瘍の罹患リスクを高める。精子が減少するといった海外での調査のほかに、日本でも10年に通信業界の監督官庁である総務省が出資した東京女子医大の研究で「一日に20分以上通話するヘビーユーザーに聴神経鞘腫(耳付近にできる良性の脳腫瘍)のリスクが2.74倍増加した」という結果も出ている。ただし、「影響はない」という結果もあるだけに、日本では問題視されていない。

 しかし、先進国を中心とした海外では、リスクがある以上予防措置をとるべきという考えが主流で、日本よりも厳しい基準を採用したり(ロシアや中国)、16歳未満の若者や妊婦には携帯電話の使用を控えるよう呼び掛けたり(イギリス)、被曝量を軽減できるイヤホンマイクを添付しないと端末を販売できない(フランス)といったさまざまな対応がとられているのだ。

 また、全国に約28万局ある携帯電話の基地局から発せられる電磁波も健康障害を引き起こす懸念が持ち上がっており、宮崎県延岡市で、恒常的な耳鳴りや慢性睡眠などの健康被害を訴える基地局周辺の住民が、KDDIに対し操業停止を求める裁判が行われており、10月17日に判決の予定だという。この秋はスマフォブームとともに、この電磁波基地局健康被害裁判の判決にも注目だ。

 こうした社会派のネタも1頁だが掲載しているところに、社会派の東洋経済らしさを見ることができるのだ。

●シャープ危機の原因は前社長の偉そうな態度だった!?

「週刊ダイヤモンド 9/1号」の特集は『シャープ非常事態』だ。創業100周年を迎えるシャープが、過去にない経営の危機に直面している。シャープはほかの電機メーカーと同じく前期、大幅赤字に転落し、過去最悪の3760億円もの損失を計上。今年度に入っても回復の兆しは見えず、第1四半期でまたもや1384億円の最終赤字に陥っている。リストラ負担も含めて通期で2500億円の最終赤字を見込んでいる。このため、市場は厳しい反応を見せ、シャープの株価は一時(8月15日)、164円を付けた。実に38年前、1974年10月以来の安値となっている。

 この株価の急落に、資本業務提携を進めていた台湾のEMS(電子機器受託製造サービス)大手の鴻海精密工業グループも、提携話の見直しを始めている。両社が提携に合意した今年3月では、鴻海は1株550円でシャープ株の9・98%を取得し、筆頭株主となる予定だったからだ。株価の急落で出資条件の見直し交渉が行なわれているが(8月31日現在)、シャープとしては鴻海から入る669億円の資金で財務改善を進めるはずだったために、再建計画の開始が遅れている。

 シャープとしては綱渡りが続く。1兆2520億円に及ぶ有利子負債(6月末時点)のうち、短期では3624億円のコマーシャルペーパーを抱え、さらに1年後の来年9月末には2000億円に上る転換社債の償還期限を迎えている。現在の財務内容では到底自力でクリアできる壁ではなく、金融機関を含めた外部の支援が必要だ。

「このまま出血が止まらなければシャープは1年と持たない」というのはシャープの準メイン銀行である三菱東京UFJ銀行幹部だ。メイン銀行であるみずほコーポレート銀行と連携して対応し、9月末までに2000億~3000億円の追加出資を検討しているという。 ここまでシャープが悪化したのは、液晶パネルから大型液晶テレビまでを一貫生産する亀山工場製の液晶製品と「アクオスケータイ」に代表される携帯電話端末、太陽電池が原因だ。これらは、急成長の原動力にもなったが、アジア各国の技術の猛追とコスト競争力などによる惨敗。携帯はスマフォの変化対応に遅れ、リーマンショックや家電エコポイントの終了などの外部要因もあって、急速に悪化した。好業績により株価も一時2600円を超えるまで上昇。市場での資金調達が容易になったため、「銀行いらず」の環境で、金融機関からの財務内容のチェック(モニタリング機能)からも遠ざかっていたことも、転落の兆候を発見することに遅れた一因だという。

 シャープの再建計画で今後注目となるのは、事業部門の売却だが、主力事業は大赤字で、複写機をはじめとする情報機器事業やエアコンなどの空調事業の売却を検討しているとも報道されている。

 ダイヤモンドは「本誌独占緊急特別インタビュー」としてシャープ奥田隆司社長が登場しているが、こうした部門の売却の可能性について、奥田社長は否定。「ただし、さまざまな事業において協力関係が必要だと判断されれば、新しい資本関係の構築は柔軟に考える」と発言している。奥田社長が見たつまずきの原因は「マーケットの需要の見方について、精度がもう少し必要だった。デジタル化の波や新興国の台頭もあった。(略)ものづくり中心でやってきたが、お客さまがあっと驚く、オンリーワン商品がしばらく生まれていなかった」と語っている。

 ダイヤモンドによれば、最大のつまずきの原因は4200億円もの巨額資金を突っ込んだ超巨大工場・堺工場だ。09年の稼動で、リーマンショックでテレビ市場が大打撃を受けた直後に稼動したこともあり、当初からいかに稼働率を確保していくのかというのが課題だったという。シャープはソニーや東芝など国内テレビメーカーへの外販戦略も失敗し大量の在庫を抱えるようになったという。  

 ライバル誌「東洋経済」も緊急特集『崖っ縁! シャープ』としてシャープの大赤字の原因に迫っているが、「身の丈を超えた積極投資」として堺工場の問題を紹介している。シャープは堺工場の安定需要先としてソニーをもくろんでいたが、積極策に打って出た片山幹雄前社長は、自社工場を持たないソニーに対し、偉そうな態度で交渉を進めていたという(嫌気のさしたソニーはその後、サムスンと合弁会社を設立)。その後も、東芝などの有力顧客に対しても、液晶パネルの需給が逼迫していたとき、シャープは自社のアクオス用のパネル生産を優先させたために納入遅延をたびたび起こすトラブルがあったという。業界関係者は一様に「堺工場を作った時点で、シャープはアクオスを捨ててでも、パネルの外販に集中すべきだった」と指摘する。

 急成長の栄光が、過信を起こし、将来を見えにくくさせていたのだろうか。 シャープは12年9月15日に創業100周年を迎えるが、その先はまだまだ迷走が続きそうだ。
(文=松井克明/CFP)

BusinessJournal編集部

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『週刊 東洋経済 2012年 9/1号』 電波感じるビビビ。 amazon_associate_logo.jpg
『週刊 ダイヤモンド 2012年 9/1号』 結局なんでつまずいたの? amazon_associate_logo.jpg

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