“熱い”スーパー銭湯業界、あの人気店の秘密とは?多彩な日替わりサービス、法人客開拓…
「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画や著作も多数あるジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、経営側だけでなく、商品の製作現場レベルの視点を織り交ぜて人気商品の裏側を解説する。
秋が深まってくると、ゆっくり湯船に浸かる時間が楽しみな人も多いかもしれない。
あらためていうまでもなく、日本人は風呂好きだ。家庭に浴室が整備されるのに伴い、昔ながらの銭湯(公衆浴場)の数は減ったが、全国各地にスーパー銭湯と呼ばれる施設も次々にでき、「安・近・短」で楽しめる娯楽として親しまれている。
公衆浴場は、法律や条例において「普通公衆浴場」と「その他の公衆浴場」に分けられる。前者は一般公衆浴場とも呼ばれ、条例などにより物価統制を受けて入浴料金が定められるのが特徴で、主に銭湯や公営の公衆浴場が当てはまる。これに対し、スーパー銭湯や健康ランド、サウナ風呂などは後者に区分される。スーパー銭湯と健康ランドに明確な違いはないが、貸し館内着があり、ショーも楽しめる施設が多い健康ランドに比べて、スーパー銭湯は入浴設備が中心だ。
入浴料は施設によって異なるが、銭湯が300~400円台なのに対して、スーパー銭湯は600~800円台が多い。なかには岩盤浴や休憩スペースなど設備を充実させ、入浴料が2000円を超えるような高級店もある。高級店と大衆店は、設備だけでなく備品も異なる。1000円でお釣りがくる施設は、銭湯と同じようにタオルは自分で持参するのが一般的となっているが、高級店は手ぶらで訪れても備品が充実しているので困ることがない。
●スーパー銭湯最大手の取り組み
さて、スーパー銭湯の業界で最大手は極楽湯だ。前身の会社が1996年から施設を運営しており、2014年10月現在、国内は北海道札幌市から宮崎県宮崎市まで、海外では中国・上海に、直営店とフランチャイズ店を合わせて39店舗を構える。ジャスダック上場企業で、前期の売上高は100億円を超えている。
今回は、そんな極楽湯の人気の秘密を探ってみよう。東京都多摩市にある「極楽湯・多摩センター店」に、平日午後の木曜日と金曜日に2度足を運んだ。
展開する施設によって違いはあるが、多摩センター店の特徴は地下1500mから汲み上げた天然温泉で、泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉だ。温浴施設は自然の湯(天然温泉)やタワーサウナ、ジェットバス、電気風呂など6~7種類、露天にも岩風呂、檜風呂など3種類ある。