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小林敬幸「ビジネスのホント」(11月6日)

はやりの企業内新規事業開発PJは、なぜ失敗するのか?冒すべき3つのタブー

文=小林敬幸/『ビジネスをつくる仕事』著者

●実行のコツ

 では最後に、新規事業開発における筆者の経験をもとに、新規事業を実行する上で重要な点を考えてみたい。

(1)複数の収益モデルの理解

 複数の収益モデルを理解した上で、新しい事業の収益モデルをつくり、それを検討するのがいい。その会社の主要事業に無理やり合わせこんで収益モデルをつくったり、主要事業と違うからといって批判したりしがちだが、これでは新規事業は成功しない。外国文化を受け入れる際のカルチャーショックと同様、2つの収益モデルを体験した人は3つ目も4つ目もスムーズに理解できるようだ。

(2)現場のいいアイデアをうまくつかむ

 日本の大企業の現場には、優秀で意欲が高い人がたくさんおり、自分が担当している分野に隣接する分野で、「こういうビジネスをすればいいのに」と思っていることが多い。まったく異なる分野の人が制約条件も知らずに「何かいいビジネス」を提案するより、よほどいいアイデアだろう。ただし、そういう人ほど賢いので、あまり自分から言い出さない。だから、おだてて褒めてプレゼンが下手でも責めずに、あの手この手を使って、そのいいアイデアを引き出すのがいい。よく、「自由に提案してこい、おれが見て叩いてやるから」といった姿勢の幹部がいるが、叩かれるのがわかっていれば、賢明なる現場の人は提案なんかしないものである。

(3)たくさん変えない

 新規事業検討の時は、広い視野をもって新規事業を位置づけたほうがいいし、収益モデルは複数知っていたほうがよい。情報を判断する時は、広くさまざまな要素を理解しておきたいものだが、いざ実行の段になれば、やることを絞ったほうがいい。新規事業をやろうとする人は、いろんなアイディアを思いつき、あれもこれもやりたくなってしまうし、買収した企業はその制度・文化を変えたくなってしまう。とはいえ、人間が実際に現実を動かせる部分はごくわずかだ。できるだけ、変えることを絞り、それを確実にきっちり変えるのが実行場面では大切だ。

 以上、偉そうに書いたが、「新規事業ができるメソッド」と受け取られなければいいのだが。
(文=小林敬幸/『ビジネスをつくる仕事』著者)

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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