(「Thinkstock」より)
これらの企業は、ルネサスの設立母体で主要株主のNEC、日立製作所、三菱電機3社や、三菱東京UFJ銀行、みずほコーポレート銀行などの主力取引行に対し、10月にも計画を正式に提案する。
ルネサスは円高や市況低迷が響き、2012年3月期連結決算で626億円の最終赤字を計上。今期も最終赤字が1500億円に上る見込みだ。従業員5000人のリストラや国内工場の半減を柱とする経営再建策を発表して、取り組んでいる最中である。
自動車・エレクトロニクスメーカーが結集するルネサス買収計画が浮上したのは、8月末に米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が1000億円で買収を提案したことが明らかになったからだ。
これに衝撃を受けたのが、政府=経済産業省と自動車・エレクトロニクス業界である。
「KKRは、まずルネサスの低採算事業を切り捨てる。そして、利益の出る筋肉質の経営体質にして、高値で転売する。自動車用のマイコンを、喉から手が出るほど欲しがっている中国の自動車メーカーが買収に手を挙げるのは確実だろう。そうなれば、日本のメーカーが培ってきた技術が海外へ流出する恐れが出る。それを防ぐためにKKRによる買収を断固、阻止することになったわけです」(外資系証券会社のアナリスト)
ルネサスは、自動車や家電の制御に使われる基幹部品のマイコンを製造している。自動車用マイコンでは世界首位だ。11年3月の東日本大震災でルネサスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)が被災した。操業を停止したため、トヨタ、日産、ホンダなど自動車メーカーの生産が一斉にストップした。
燃費や走行性能を左右するエンジンユニットなどに組み込むマイコンは「特注」であるため、代替が利かない。欧米のマイコンメーカーから調達して補うというわけにはいかないのだ。
「ルネサスの赤字の原因のひとつは、各社が特注品を発注しているにもかかわらず、厳しい値下げを要請したことだ。KKRが経営権を握れば、改善策として特注をやめ、量産効果が見込める半導体の生産に特化する可能性がある。自動車メーカーにとっては死活問題になる。日本の自動車メーカーが技術面で優位に立っているハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)に使われるマイコンは、すべて特注品だからです」(前出の外資系証券会社のアナリスト)