JDIは上場直後の4月、14年3月期決算見通しを下方修正した。さらに10月15日には、15年同期の決算見通しを増益(268億円の黒字)から100億円の最終赤字とした。中国向けの中小型液晶パネルの販売が失速し、高精細パネルを生産する深谷工場(埼玉県深谷市)を閉鎖するというのが赤字転落の理由だった。11月13日にもさらなる下方修正を行い、上場後2期にわたり3度も業績の下方修正を繰り返したことで投資家の信頼を失った。
10月15日の発表では15年3月期の売上高は従来予想より100億円少ない7400億円。営業利益は従来予想の400億円から65億円へと大幅ダウン。前期(276億円)から76%の減益となる。最終損益は268億円の黒字予想から、一転して100億円の赤字に転落した。前期は339億円の黒字だった。
さらに11月13日には3度目の下方修正をした。会社更生法を申請した台湾のタッチパネル大手ウィンテック向けの債権を、貸倒引当金(21億円)として7~9月期決算で計上したこともあり最終赤字が膨らんだ。同日の発表では14年4~9月期連結決算の最終損益は前年同期の265億円の黒字から277億円の赤字となった。中国などのスマートフォン(スマホ)メーカーに供給する液晶パネルの単価下落や販売数量減が赤字の引き金となったとしているが、競合するシャープの14年4~9月期決算は中間期として4期ぶりに最終黒字を計上した。シャープの業績を牽引したのは、中国のスマホメーカーへの液晶パネルの販売の好調さだった。JDIの15年3月期(通期)の最終損益段階の赤字は100億円から121億円へと、さらに悪化した。
●中国スマホ開拓で明暗
シャープの高橋興三社長は「14年4~9月期の中国向け売り上げは1000億円。下期はこれを上回る」と、その好調ぶりをアピールしている。中国の新興スマホメーカー、北京小米科技(シャオミ)に液晶パネルを大量に供給しているが、シャオミのスマホの世界出荷台数は急増し、韓国サムスン電子、米アップルに次いで3位に入った。
一方、JDIはそのシャオミへの売り込みに失敗した。「価格で折り合わず、一度、ビジネスを断った」(同社の大塚周一社長)。勢いのあるシャオミを手に入れたシャープと、取り込みに失敗したJDI。交渉力の差が、両社の業績の明暗を分けたことになる。