●三木谷氏と南場氏の亀裂
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で鳴かず飛ばずだったグリーが、生き残りをかけて転進したのがソーシャルゲームだった。07年5月、初のモバイルソーシャルゲーム「釣り★スタ」を配信した。これが当たり、携帯電話用ゲームの課金システムで急成長を遂げる。
09年2月、ディー・エヌ・エーは「釣りゲータウン2」の配信を開始。グリーは「釣り★スタ」に酷似しているとしてディー・エヌ・エーに配信差し止めと損害賠償を求めて提訴した。一審の東京地裁でグリーが勝訴、二審の知財高裁ではディー・エヌ・エーが逆転勝訴した。最高裁は13年4月、グリーの上告を棄却し、グリーの敗訴が確定した。これが三木谷氏と南場氏の間の亀裂を深めた原因になったと、ゲーム業界では見られている。
●南場氏の経営トップ復帰観測広まる
南場氏は11年5月、「病気療養中の夫の看病に専念する」との理由で、社長から取締役に退き、守安功氏が社長に就任した。守安氏が社長になってから南場氏が表舞台に出ることはなかったが、昨春に夫が病気から回復したことでフルタイムの現場復帰を宣言した。復帰した背景には、ディー・エヌ・エーの足元の業績が揺らいできたという危機感がある。ディー・エヌ・エーもグリーもゲーム内のくじである「コンプガチャ」が消費者庁から景品表示法違反と指摘され、社会問題化。ディー・エヌ・エーは利用者が激減したが、ゲームの売り上げが全体の8割以上を占め、影響は甚大だった。同社の14年3月期決算の売上高と税引き後利益は、上場後初の減収減益となった。
スマートフォン(スマホ)にダウンロードして遊ぶゲームアプリに人気が集まる流れが続き、利用者離れに歯止めがかからない。14年4~12月期の売上高は前年同期比25%減の1066億円。純利益は同54%減の120億円の見通し。15年3月期(通期)の連結業績予想は公表していない。ディー・エヌ・エーとグリーは従来型携帯電話向けゲームで急成長したため、スマホへの転換が遅れた点でも共通している。
そこでディー・エヌ・エーは、ゲーム頼みからの脱却を急いでいる。昨年8月、東京大学医科学研究所と共同で遺伝子検査サービスを始めた。その旗振り役を務めているのが南場氏だ。南場氏はディー・エヌ・エー株式の13.1%を保有する実質的なオーナーで、個人筆頭株主でもある。15年春の株主総会後の取締役会で、代表権を持つ会長か社長に復帰し、苦境を打破するために陣頭指揮を執るとの観測も一部では流れており、経営トップへの復帰の先触れとして、球団オーナーに就任したとの見方もある。