急増するクレームストーカー 謝罪要求口実に女性店員につきまとい なぜ対応難しい?
商品やサービスに問題がないのに、店員の接客態度や電話窓口の対応に執拗に文句をつける人をクレーマーと呼ぶが、企業側の担当者が女性の場合、苦情を装ってその女性につきまとう「クレームストーカー」の被害が話題になっている。
1月9日付毎日新聞記事『クレームストーカー:窓口女性に恋愛感情隠し接近』で、この問題を取り上げている。自治体の窓口担当の女性に対し、毎日のように職場に電話したり、窓口に何時間も居座った挙げ句、「女性の態度が悪い」「本人に謝罪させろ」などと半年間にわたってつきまとった男性や、育毛サロンの女性店長が顧客男性からサービスへの苦情を盾にしつこく面会を要求され、最終的には異動せざるを得なくなったうえ、男性から女性個人に対して慰謝料を請求する裁判まで起こされた例などが紹介されていた。
実際、筆者の周囲でもストーカーとまではいかないものの、「笑顔で丁寧に接客することが売りの店なので、男性客に好意があると勘違いされることがよくある」という女性店員や、「取引関係維持のために毎月必ず訪問する客先の担当者から、特に発注がないのに執拗に誘われて困る」という営業職女性の声をよく聞く。
被害があるのは明らかだが、前述の新聞記事などを見ても、こういったクレームストーカー事件は「対応が難しい」という論調で一致している。いったい、なぜなのだろうか?
●クレームストーカーの対応が難しい理由
彼らのことをストーカーという認識で見た場合、「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」が適用できそうだ。しかし、同法で規制している「つきまとい」は、「恋愛感情その他の好意感情を充足する目的」もしくは「それが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」の場合に限られる。つまり、
・加害者はあくまで「顧客」
・つきまといの口実はあくまで「クレーム」
・加害者が「恋愛感情を表に出していない」
これらに当てはまる以上、同法による規制は難しい。したがって、警察に通報もできず、対応に苦慮するケースが多いのである。
では、具体的に加害者の行動がどこまで進めば、法的に対処できるようになるのだろうか。以下はケーススタディである。
・店員が「お引き取りください」と要求しても帰らなければ「不退去罪(刑法130条)」が適用される
・店内で店員の制止に従わず、大声を出し続けると「威力業務妨害(刑法234条)」が適用される
・店員に無理やり土下座させたり、謝罪文を書かせたりした場合は、「強要罪(刑法223条)」が適用される
また、粗暴、痴漢、つきまとい、盗撮、のぞきといった行為については、各自治体が定めている「迷惑防止条例」等にも該当する可能性がある。しかし、上記が適用されて刑事事件として警察が介入しても、ストーカー規制法のように「警告」や「禁止命令」といった即効性のある対策は取れない。