●本田技研工業
本田技研工業の伊東孝紳社長は、6月でトップ就任から6年を迎える。経営改革は道半ばと判断、続投する構えを見せているが、タカタ製エアバッグのリコール問題に対する認識の甘さなどが指摘されており、交代の火種はくすぶる。
とはいえ、現実的に伊東氏の後継者は誰かということになると、いずれも「帯に短し、たすきに長し」といわれている。後継者がいないから続投、という消極的な選択で落ち着くのかもしれない。
●富士通
ITサービス、サーバーで国内首位の富士通は、10人抜きでトップが交代する。6月22日付で、新社長には田中達也執行役員常務が昇格し、山本正已社長は代表権のある会長に就く。田中氏は昨年4月に常務になったばかりで、本人も「シンガポールにいたので、(社長昇格は)予想していなかった。非常に驚きの人事だった」と語るほどのサプライズ人事だ。
しかし、山本氏は早くから田中氏に目をつけていたという。田中氏は03年、自ら手を挙げて苦戦続きの中国市場に飛び込み、大きく売り上げを伸ばした。昨年からはアジア10カ国の責任者を務めている。
富士通は近年、内紛に揺れてきた。09年9月に社長を辞任した野副州旦氏が、同社の最高実力者である取締役相談役の秋草直之氏らに「社長として不適格」との烙印を押されて辞任を迫られたとして、社長辞任の取り消しを求める文書を提出した。これに対して富士通側は10年3月の臨時取締役会で野副氏を相談役から解任したのだ。
続投の目もあった山本氏は、海外勤務で派閥抗争の圏外にあった田中氏に企業改革を託したといえる。
●三菱ケミカルホールディングス
財界人事との連動型が、三菱ケミカルホールディングス(HD、以下同)だ。小林喜光社長が4月に経済同友会の代表幹事に就任するのに合わせて、同社の会長に就く。後任には、三菱レイヨンの越智仁社長が就任する。越智氏は、引き続き三菱レイヨン社長も兼務する。
経済同友会の代表幹事と三菱ケミカルHD社長という二足のわらじを履くのは無理があるため、小林氏は負担軽減のために社長の座を降りたが、実権を手放すつもりはなさそうだ。6月の株主総会後、三菱ケミカルHDは委員会設置会社に移行する。小林氏は会長として委員会を取り仕切り、実質的なトップであり続けるのだ。