その可能性を秘めているのが、大家と借主をダイレクトにつなげる不動産賃貸情報サイト「ウチコミ!」だ。大家が物件を直接掲載できる仕組みを構築し、借主には仲介手数料0円を掲げている「ウチコミ!」は、大家と借主の間にWIN-WINの関係を築いている。
この物件仲介システムは日本初であり、業界内外にかかわらず注目を集めているが、サイト誕生の裏には不動産業界に根付いている大きな問題が関係しているという。
今回は、「ウチコミ!」の運営元であるアルティメット総研の代表取締役社長であり、著書『不動産屋は笑顔のウラで何を考えているのか?』(幻冬舎)を刊行したこともある大友健右氏に、同サイトの魅力と一般人が知らない不動産業界の裏側を聞いた。
不動産会社がひた隠す「借主には見えないこと」
「一般的に、物件の貸し借りには『大家』『借主』『不動産会社』の三者がかかわっていますが、実は大家と借主の間に『不動産会社の利益のためだけのブラックボックス』があります。それによって、借主に『見えない壁』とでもいうべき『情報の非対称性の壁』が生まれてしまい、結果として不動産流通の妨げになっているのです」
「情報の非対称性の壁」とはあまり聞かない言葉だが、いったいどういう意味なのだろうか? 大友氏は「そこには、『借主には見えないこと』と『大家には見えないこと』がある」と語る。
「まず『借主には見えないこと』についてご説明しましょう。自分でマンションやアパートなどの賃貸物件を探す場合、最近はインターネットで不動産会社のポータルサイトを利用することが多いと思います。エリア、家賃、面積、間取りなどを設定して検索できるため、とても便利だと感じる人も少なくないでしょう。しかし、実はこのポータルサイトがクセモノなのです。一言でいうと、こういったサイトで紹介されている物件は公平に扱われていません。ポータルサイトに掲載をする不動産会社の勝手な基準で選ばれた物件が、優先して紹介されているのです。さらに、いわゆるおとり物件が平然と掲載されていることもあります」
おとり物件というのは、相場より明らかにいい条件だが実際には実在していない、もしくは貸し出す意思のない物件のことを指す。物件を探している客を釣るための偽情報ともいえるものだ。
「テレビCMなどでもおなじみの大手不動産会社のサイトにも、堂々とおとり物件が掲載されています。ただ、何度か賃貸物件を探した経験のある人なら、その存在はご存じかもしれません。しかし、それだけでなく、不動産会社はサイトに好条件がそろっている『物件力』の高い優良物件や、AD(エーディー)と呼ばれる広告料を多く出してくれる大家の物件を優先的に紹介していたりするのです。それだけならまだしも、物件力が低かったり、ADが少ない大家の物件は、ほぼ広告活動をしないこともあるのです」