1.コンテンツの送り手となり、ユーザーと同じ土俵で無料のコンテンツを戦わせる
今や、企業がオウンドメディアやソーシャルメディアを使って自ら情報発信を行うことは、珍しくありません。業務内容と読者の興味が交わるポイントを記事にして発信していくという手法は、地道ですが正攻法のひとつといえるでしょう。サイボウズが運営する「サイボウズ式」や、日本IBMが運営する「Mugendai(無限大)」などの自社サイトは、代表的なオウンドメディアといえます。
また、スマホの普及によってネット上での動画視聴が当たり前になってきたことに合わせて、各社の動画コンテンツ制作も盛んになってきています。テレビCMに費やしていた予算を、ユーザーを楽しませるための動画コンテンツ制作費に転換する、という流れも珍しくありません。広告ではなくコンテンツを作ることで、より自然に消費者にアプローチするというわけです。
2.ユーザーとのコラボレーションを促進する
企業が自らコンテンツを作るのではなく、コンテンツの送り手とのコラボレーションを図るのも、有効な手段です。ソーシャルメディアの登場は、消費者を雄弁な発信者に変えました。独自に制作した動画を「YouTube」で共有し、広告収入を得るYouTuberに代表される、ネット上のカリスマ的存在も数多く誕生しています。例えば、ソーシャルゲームの会員獲得において、YouTuberとのコラボはとても一般的なものとなりました。
マックスむらい氏と人気ゲームアプリ「パズル&ドラゴンズ」のように、プレイヤーの実況動画を見たユーザーがアプリをダウンロードするという流れで、カリスマプレイヤーとアプリ会員獲得の間には切っても切れない関係が生まれています。また、単純に広告によって獲得したユーザーと、実況動画経由のユーザーを比べた場合、後者のほうがアクティブ率が高いといった事例も出てきています。
また、ゲーム実況動画においては、任天堂が動画配信者と広告収益を折半する「Nintendo Creators Program」というサービスを発表しています。コンテンツホルダー自ら、動画配信者に歩み寄ることで、さらなるビジネスチャンスを生もうとしているのです。
イラストコミュニケーションサービスの「pixiv」は、定期的に飲料メーカーなどとコラボイラストコンテストを開いています。作品は商品パッケージとして使われるなど、作品を世に出したいユーザーと企業側の双方にメリットがあるコラボが次々と起きています。クックパッドのレシピコンテストなども同様です。
ソーシャル時代のマーケティングは「いかに消費者と一緒に楽しめるか」が鍵
これまで、従来型の広告を全否定するような書き方をしてきましたが、もちろん、現状において広告を使わなくてはならない場面は多くあります。例で示したコンテンツ中心のマーケティングにおいても、一気に露出する上では広告・メディアの力を借りなければなりません。
しかし、その一方で、従来型の広告手法とは明らかに違った、コンテンツ主導の新しい時代に変化していることは間違いありません。大切なことは、もはや企業と消費者の間に境界線はなく、マーケティングにも、消費者の隣に寄り添う「友人のような存在感」が求められているということです。
(文=黒沼 透@torukuronuma/株式会社アクトゼロ取締役)
●株式会社アクトゼロ(http://www.actzero.jp/)
ソーシャルメディアマーケティング、コンテンツマーケティング、YouTube・Vineなどのネット動画プラットフォーム活用で、国内有数のクライアント実績を持つ。