中国では、日本製紙オムツの人気が高く、日本の倍以上の価格で取引される。価格差に目をつけた中国人ブローカーが日本国内で紙オムツを買い占め、中国に持ち込んで高値で売るようになった。やがて日本全国で中国人の買い占め部隊が出動する騒ぎにエスカレートした。中でも、爆発的な人気を集めている紙オムツが花王の「メリーズ」だ。
花王が出遅れていた中国市場に本腰を入れ始めたのが2013年である。同年1月、ベビー用紙オムツとしては同社初となる中間所得層向け製品「メリーズ瞬爽透気」を発売した。12年10月に稼動した中国初のオムツ工場で生産している。標準Mサイズで1枚当たり約1.6元(約30円)の価格は、日本から輸出して販売してきた従来製品の半値近い。
トイレタリーで国内最大手の花王は、売上高1兆2160億円(12年3月期実績。13年に12月決算に変更)のうち7割超を国内で稼いでいた。海外売上高比率を27%から50%以上に引き上げる目標を掲げる。特に300億円程度の年商しかない中国事業をいかに伸ばすかが、大きな課題だった。
中国の紙オムツ市場は米P&Gがシェア30%超でトップ。ユニ・チャームが20%弱で2位グループにつける。花王は追いつき、追い越すことを狙って中間所得層の開拓に乗り出した。中国では富裕層を対象に日本基準の高価格商品を中心に販売してきたが、戦略の大転換を図り、その第一弾が「メリーズ」だった。
中国では「一人っ子政策」もあり、子どものためなら出費を惜しまない家庭が増えてきた。花王は沿岸部の中間所得層をターゲットにして売り込んだところ、想定をはるかに超える効果をもたらした。インターネット上で「メリーズがいい」という書き込みが増え、メリーズ人気に火が付き、日本でのメリーズ買い占め騒動に発展したのだ。
●花王、中国事業黒字化
花王の14年12月期連結決算は好調だった。売上高は過去最高の1兆4017億円(前期比6.6%増)。営業利益は9期ぶりに過去最高益を更新した13年同期を上回り、1332億円(6.9%増)となった。カネボウ化粧品の買収で24期続いた経常増益の記録こそ途絶えたが、国内最長の増配記録は、14年12月期で25期連続となった。15年12月期を最終年度とする中期経営計画の目標である連結売上高1兆4000億円を突破し、営業利益1500億円の達成は射程圏内に入った。