主力2行は、16年3月末を期限として融資の全額の借り換えに応じるとともに、転換社債の償還の原資として、16年3月末を期限に新たに1500億円の追加融資枠を設定した。金融支援の条件に、中期計画達成を必達目標と課した。計画が未達になったときはどうするのか。主力2行はシャープに、借入金の一括返済を求めることができる。債務の株式化というシャープに都合のよい金融支援を求められた主力2行はシャープを支援するのか、はたまた見捨てるのか、決断を迫られることになった。
シャープは主力2行への支援要請のほかに、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)に最大300億円規模の出資を要請した。JISはみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行のほか、三井住友銀行、日本政策投資銀行と三菱商事が出資している。当初1750億円といわれていた主力2行への支援要請が、1500億円に250億円減額された穴埋めの色彩が強い。
シャープの高橋興三社長は3月5日、東京都内で、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行の担当役員らと相次いで会い、5月に発表を予定している経営再建策の骨子を説明した。両行は「構造改革が先」と注文をつけ、抜本的な経営再建策の提示を求めた。シャープの有利子負債は14年末でおよそ1兆円に上り、主力2行分だけで6000億円を超えている。シャープは5月に発表する新たな再建計画に主力2行の支援を盛り込みたい考えだが、厳しい交渉が予想される。
●再び姿を現した台湾・鴻海
こうした動きと並行して、EMS(電子機器受託製造サービス)世界最大手の台湾・鴻海精密工業が、再びシャープとの資本提携交渉の検討を始めた。3月4日付日刊工業新聞が鴻海グループ幹部の話として伝え、近く再協議を申し込む意向だという。
鴻海は過去、シャープが経営危機の際に、いち早く支援を表明した。12年3月、シャープと鴻海は業務資本提携を締結し、鴻海側が1300億円を投じ、うち半額をシャープ本体に、残りを利益圧迫要因となっていた大阪府堺市にある大型液晶ディスプレイ工場(現・堺ディスプレイプロダクト)に出資する計画だった。
堺ディスプレイには鴻海の郭台銘董事長が個人で出資し、共同運営にして再建に協力してきた。だが、同時に進めていたシャープ本体への出資交渉はシャープの株価が急落して、当初条件から大きく乖離したため鴻海側が条件の見直しを求めたが、シャープが応じず決裂。本体同士の提携は白紙に戻った。シャープはその後、韓国サムスン電子や米クアルコムなどと資本提携し、さらに公募増資で急場をしのいできた。
一方、郭氏は日本のメディアに「シャープにだまされた」と語るなど、これまでシャープとは距離を置いてきたが、シャープとの提携をあきらめたわけではなかったようだ。「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/14年6月21日号)の単独インタューで、「(シャープに対し)今でも出資したいと思っている」と語っていた。
鴻海は、再び経営危機に瀕したシャープの救世主となるか。
(文=編集部)