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孫正義の弟、ガンホー創業者…異端の経営者の“正体” 「金に執着しない」経営で大成功

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 当時、ITの世界の優れた才能の多くは企業の中に囲われていて、「兼業禁止」のルールがあり、会社の許可がなければ、そうした外部のネットワークへの協力は禁じられていた。その状況は現在もそれほど変わってはいない。泰蔵氏はそれを承知で「会社をつくらなくても、起業すると手を挙げてくれるだけでいい。集まってネットワークをつくり、いい仕事をしよう」と呼びかけていた。

 それから19年の歳月が経過する間に、多くの優れた才能が企業の枠から飛び出し、ベンチャーの旗を揚げたり、それに協力したりしてITの発展に貢献した。泰蔵氏はガンホーの前身の会社を設立し、オンラインゲーム『ラグナロクオンライン』の将来性に着目して、韓国のグラビティから国内運営権を獲得すると、驚異的な成長を遂げた。13年3月にアジアングルーヴはガンホー株をソフトバンクに売却して利益を得ている。

カネで人を動かす起業家と、志で人を集め、動かす起業家

 起業したばかりの頃の泰蔵氏の「メタボール・コーポレーション」という発想は、「人はカネでしか動かない」ではなく、「人は志で動く」ということに立脚している。例えば、ジャズのミュージシャンが「あの人と一緒にセッションしたい」と思うのは「たくさんカネをくれるから」ではなく、「いい音楽がやれると思うから」「音楽的に得られるものが大きいと思うから」だろう。ベンチャーの人脈もカネ、利害得失でかき集める関係以外に、その志に触れて、「いい夢が見られると思うから」「自分も得られるものが大きいと思うから」といった動機で集まってくるネットワークがあってもよく、現にそれはあるはずだ。カネは、その後からついてくる。

「カネに対する執着心がないと起業は成功しない」と言っている人がいるが、それは「人はカネでしか動かない」と言っているのに近い。それでも成功を収めることはできるが、そんな起業家と、人脈のネットワークを大切にし、志で人を集め、動かそうとする起業家では、タイプが違う。それは別にいい悪いではなく、出発点が異なっている。

 泰蔵氏は近年、スタートアップ支援を目的とするベンチャーキャピタル、モビーダジャパンを設立し、IT分野にとどまらず多くの若手起業家やベンチャーをセミナーで直接指導しては育てているが、自らのスタートアップ時は、カネではなく志で人を集めて動かせるような起業家を目指し、結果として成功を収めた。これから起業を目指す人にとって、示唆に富む話ではないだろうか。
(文=寺尾淳/ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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