盛り上がる国内レジャー…首都圏回帰、一極集中、大手航空やJRにも恩恵
(撮影:Tokyoship「Wikipedia」より)
「週刊東洋経済 5/25号」の特集は『沸騰! エアライン&ホテル』だ。 アベノミクスによる資産バブルは、レジャー需要にも火をつけた。2013年3月期、日本航空(JAL)は売上高1兆2388億円、営業利益1952億円をたたき出し、ライバルの全日本空輸(ANA)も過去最高営業益を更新。 巻頭の記事によれば、「旅客数や座席利用率も伸びており、確実に環境が好転したのがわかる。特に国内線は2月を底に底入れし、このゴールデンウイーク(GW)予約は、両社とも前年比でプラス転換した」という。
JR東日本も、3月の新幹線の営業収入が2ケタ増。JTBによると、今年のGWの国内旅行人数は2223万人とみられ、過去最高だった。顧客争奪戦が開始されたエアラインやホテル業界を特集したものだ。
「エアライン JALの猛威、ANAの焦燥」、「ホテル “アベノ需要”に懸ける業界」という大きく2つに分けられた業界特集だ。
知っておきたい動きとしては、全国的な“首都圏回帰”の傾向がある。開園30周年を迎え、今期は入場者数目標が20万人増の2770万人、客単価が1万700円と圧倒的な支持を得る「東京ディズニーリゾート」(TDR)と、開業後1年で商業施設ソラマチも加えた来客数が5月なかばに累計5000万人を突破した「東京スカイツリータウン」という「東京」ブランドが注目を集めているということだ。
一方で、全国の観光地では一部に人気が集中。世界文化遺産への登録が内定した富士山は、12年の登山者数が31万人強。今シーズンの記録更新が確実視されている。金曜夜の乗車率は99%、女性比率は4割という縁結びの神様・出雲大社に向けた寝台特急「サンライズ出雲」も人気だ。3月に新石垣空港が開港し、人気の沖縄は国内からだけでなく、台湾との直行便にも道を開いた。
また、円安の影響もあってパッとしないのが海外だ。特集記事によれば「成田−ロンドン線のビジネスクラス往復が23万円。日本航空は12年、ある法人客に衝撃的な航空運賃を提示した。09年に約85万円だった同路線の価格を、JALは4分の1近くまでディスカウント。国土交通省が実態を把握しにくい法人営業で、猛烈な攻勢をかけている」という。
シェアを攻撃的に獲りにいく「新生JAL」の姿も見えるが国際線が盛り上がっていないことの証左でもある。
「ドル=102円まで円安が進んだ今、業界が期待するのは、むしろインバウンド(訪日外国人客)である。政府は訪日外国人旅行者数を12年の837万人から、16年に1800万人まで拡大する目標を掲げる」と特集記事。
今後の航空業界の気になる動きは、6月1日より再開される旅客機「ボーイング787」だ。1月のバッテリー出火により全機の運航停止が命じられてから4カ月余り。米国連邦航空局(FAA)は、4月下旬にボーイング社の改修プランを承認。これを受け、2社は改修作業やテスト飛行を行ってきた。こうした飛行によっても新たなバッテリー異常は発生せず、十分な安全性が確認されたとして、運航再開を判断。日本の大手2社では、ANAが18機、日本航空(JAL)が7機を保有しており、運航再開を急ぎたい経営の事情があるという(東洋経済オンライン『B787の運航再開急ぐ、ANAの事情 臨時便で、JALに先行』)。
また、15年春に金沢まで開通する北陸新幹線も航空業界にとっては脅威だ。東京―金沢間がこれまでのおよそ4時間から2時間30分に短縮される。「鉄道の移動時間が4時間を下回ると同区間の航空機の競争力が低下する」という業界の「4時間の壁」という経験則からすれば、北陸も新幹線優位の時代になりそうだ(東洋経済オンライン『顧客は東京へ?北陸新幹線に焦る関西財界 長野―金沢ルート開通で、東京―金沢は2時間半に』)。
最後に、読んでおきたいのは、「ピーチ健闘、出遅れ2社 LCC1年後の通信簿」という特集記事だ。2012年は「LCC元年」とされLCC(格安航空)が注目された。現在では、毎日22機、約130便のLCCが日本の空を飛んでいる。現在の座席数は国内線で全体の約5%だ。12年3月にピーチ・アビエーション、7月にジェットスター・ジャパン、8月にエアアジア・ジャパンと就航を始めたが、順風満帆とは行っていない。安全への漠然とした不安や23時以降は発着できない成田国際空港の門限問題(条件付きで24時まで緩和されているが)などから、当初は高かった搭乗率が秋口から陰りを見せ、収益改善に苦労している現状があるという。やはり「安さ」だけの時代は終わったのかもしれない。
そろそろ夏季休暇の予定を決め始める時期にうってつけの特集だ。
(文=松井克明/FCP)