農林水産省は、ブランド果樹など国産農産物について、知的財産権を活用し、海外で「稼ぐ」仕組みを整える。これまで優良品種の無断流出防止に力を入れてきたが、今後は知財保護だけではなく、海外の生産者や企業に生産・販売ライセンスを供与。新たに得られるライセンス収入を品種開発への投資に振り向ける。
新たな仕組みでは、国の農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)などが、植物の新品種に与えられる知的財産権「育成者権」を管理・保護する機関を設立。この機関が、農研機構や都道府県などの開発者が持つ育成者権を、海外の信頼できるパートナーにライセンス供与し、権利使用料を徴収する。
農水省はこのほど、「海外ライセンス指針」を策定。指針では年間を通じて日本品種を海外市場に供給する戦略を掲げた。同省は、日本と季節が正反対の南半球でライセンス展開できれば、ライセンス供与先とは出荷時期がずれるため、日本産品の相手国市場への輸出拡大にも道が開けるとみている。
ライセンス先を通じ、日本から目が届きにくい海外市場での権利侵害に対する監視が強化されることにも期待している。
一方、ライセンス供与に当たっては、日本への出荷制限を含む国内生産者との競合回避策や、流出時の損害賠償規定などの設定も求めた。
2020年に農水省が発表した調査では、日本産のイチゴやブドウなど36品種が中国や韓国に流出していた。
16年ごろに流出した高級ブドウ「シャインマスカット」は、中国で急速に普及し、栽培面積は日本の約30倍に拡大した。農水省は、ライセンス契約によって3%の権利使用料を設定していれば、得られた収益は年間100億円を上回ったと試算しており、知財戦略で巻き返しを図る。
◇海外ライセンス指針のポイント
一、輸出戦略や国内生産に悪影響が出ない市場を選定
一、信頼できるパートナーに限定してライセンスを供与し、相手国で無断栽培の監視体制を構築
一、相手にもメリットがある形で契約関係を広げ、無秩序な生産・販売を管理可能なライセンス生産・販売に置き換え
一、契約では国内市場への出荷制限を含む日本産との競合回避策を導入
一、流出時の罰則として損害賠償や違約金を設定
(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/01/13-14:35)