政府・日銀が大型連休中、外国為替市場で円買い・ドル売りの為替介入に踏み切ったとの観測が広がっている。円相場が急落したタイミングで大量の円買い注文が入り、一気に円高方向に触れる場面が相次いだ。市場関係者の推計によると、介入規模は計8兆円。ただ、円安に歯止めをかける効果は一時的で、今後も円安基調が続くとの見方が根強い。
―為替介入とは。
為替相場の急変動を抑えるため、政府と中央銀行が外為市場で通貨を売買することだ。日本は財務相が実施するかどうかを決める権限を持ち、その指示に従って日銀が取引する。円安の時は保有する外貨資産を売って円を買い、円高の時には円を売って外貨資産を購入する。自国だけで行う場合は単独介入、複数の通貨当局が協力して行う場合は協調介入と呼ばれる。
―なぜ介入するのか。
投機的な動きなどによって為替レートが不安定になることで、日本経済に悪影響が生じるのを防ぐためだ。行き過ぎた円安は石油や農産物など輸入品の価格高騰を招き、家計や企業収益を圧迫する。逆に、円高は日本の輸出品が他国製品に比べて価格が高くなって輸出競争力が低下する。
―最近の事例は。
一時1ドル=160円台と約34年ぶりの円安水準に達した4月29日、5兆円規模の介入が実施されたとみられている。5月2日にも円が急騰し、3兆円規模の介入があったもようだ。政府は介入の有無を明らかにしておらず、「覆面介入」を繰り返しているとの見方が強まっている。
―覆面介入とは。
介入したかどうかをすぐに明かさないで実施することだ。市場に「介入がいつ行われるか分からない」という疑心暗鬼を生み、一方的な取引を手控えさせる効果を狙っている。これに対し、財務相らが介入直後に実施したと公表し、「アナウンス効果」を狙う場合もある。介入の有無は、財務省が毎月末に公表する統計で判明する。4月26日から5月29日までの介入状況は同31日に明らかになる。
―円相場の見通しは。
円安の背景となっている日米の金利差が広がった状態は当面続きそうで、介入だけで円安基調は変わらないとの見方が多い。再び160円を超えて円安が進むと指摘する関係者も少なくない。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/05/07-17:03)