大手銀行や地方銀行が、3~4月に普通預金の金利を相次いで引き上げた。日銀によるマイナス金利政策の解除を踏まえたもので、約17年ぶりの動きだ。貸し出しでも一部ネット系銀行が住宅ローンの変動型金利を上げており、じわりと「金利のある世界」が戻りつつある。
「ゲームチェンジだ」。3月に日銀が短期金利の誘導目標を「0~0.1%程度」のプラス圏に据えると、みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長ら銀行界から歓迎の声が上がった。長年の超低金利環境が解消すれば、資金調達時の金利と貸出金利の差である「利ざや」で稼ぐ銀行本来の業務が復活する。
木原氏は「ビジネスの原資として預金を持つ重要性が一層増す」と強調。三菱UFJや三井住友、みずほなど大手行や地銀は足並みをそろえ、普通預金金利を従来の0.001%から0.02%に改定した。日銀によると、4月初めの時点で利率を上げた金融機関は7割強に上った。
日銀が今後も利上げをしていけば、金利やサービスの差別化で「(各行による預金の)獲得競争が活発化することは十分にあり得る」(全国銀行協会の福留朗裕会長=三井住友銀行頭取)と指摘される。
一方、家計や企業活動を圧迫する貸出金利の引き上げには様子見姿勢が強い。大半の銀行は、住宅ローンの変動金利や短期の企業向け融資の基になる短期プライムレート(最優遇貸出金利)を据え置いたままだ。
ただ、低金利の住宅ローンを売りにしてきた住信SBIネット銀行は短プラを5月から1.775%(従来1.675%)に引き上げた。イオン銀行や、市場金利に連動させている楽天銀行も5月の住宅ローン変動金利を上げるなど、改定の動きも出つつある。
変動金利型は新規の住宅ローンの8割を占める。金利上昇時の激変緩和の仕組みによって毎月の返済額急増が抑えられる場合も多いが、返済総額は膨らむため家計の負担は増える。日銀の追加利上げ時には多くの銀行が短プラを上げるとみられており、日銀の「次の一手」に注目が集まる。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/05/03-15:04)