社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)年金部会は24日、2025年の制度改革に関する報告書案を議論し、大筋で取りまとめた。将来世代の基礎年金(国民年金)の給付水準を底上げする重要性や、パートなど短時間労働者の厚生年金加入を制限する「年収106万円の壁」の撤廃が盛り込まれた。厚労省は来年の通常国会への法案提出を目指す。
部会では、過去30年と同じ実質経済成長率が続くといった想定で議論を重ねてきた。少子高齢化が進んでも制度を維持させるため、支給額を徐々に抑える仕組み「マクロ経済スライド」の下で、財政が脆弱(ぜいじゃく)な基礎年金の減額調整は57年度まで続く見通し。高齢者の暮らしが悪化する懸念がある。
報告書案は、給付水準底上げの重要性で意見がおおむね一致したと説明。ただ、財政が比較的豊かな厚生年金の積立金と国費を投じて調整期間を短くし、将来世代の基礎年金を3割程度改善させる厚労省案には賛否両論が出た。賛成が多かったものの、厚生年金の受給額が下がる場合に「国民の理解が得られるのか」との指摘もあり、まとまらなかった。
パートの厚生年金は、「年収106万円以上」とする賃金要件や、勤務先を「従業員数51人以上」と定める企業規模要件をなくし、週20時間以上働くと加入を義務付けることでおおむね一致。保険料の支払い義務が生じた際の手取り減少を緩和するため、企業側の負担割合を増やせる特例制度の創設も賛成が多かったと明記した。
サラリーマンの扶養に入る配偶者が保険料を払わなくても基礎年金を受け取れる「第3号被保険者制度」は、見直しの方向性がまとまらなかった。一定の収入がある65歳以上の高齢者の厚生年金を減らす「在職老齢年金制度」は、減額の基準となる賃金と年金の合計額(月50万円)を引き上げたり、将来的に廃止を求めたりする案が示された。子どものいない夫婦が死別した際の遺族厚生年金は、受給期間を男女とも原則5年とした上で、配慮が必要な場合は最長65歳まで受け取れるようにする。
◇年金部会報告書のポイント
一、基礎年金の給付水準底上げの重要性で一致。厚生年金の積立金と国費の活用に賛成・慎重両論
一、厚生年金加入のパートを増やすため、「年収106万円以上」と「従業員数51人以上」の要件撤廃
一、パートの厚生年金保険料について、企業側の負担割合を増やせる特例制度創設
一、在職老齢年金制度は、減額基準額の引き上げ、将来的な廃止を提示
一、子のない夫婦の死別時の遺族厚生年金は、受給期間を男女とも原則5年に見直し(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/12/24-17:28)