ビジネスジャーナル > 経済ニュース > うつ急増は製薬企業のキャンペーン?  > 2ページ目
NEW

うつ急増の背景に製薬企業のキャンペーン、自殺企図リスク隠す~うつを免罪符に怠ける社員も

文=松井克明/CFP

●うつ急増は、製薬会社のキャンペーンが原因?

 今回知っておきたいのは、特集記事PART4『うつ急増のカラクリ』だ。なぜ、うつ病の人が増えているのか。そこには製薬会社の病気啓発キャンペーンがあるというのだ。日本国内抗うつ剤の市場規模、うつ病患者数、メンタル休職率は、それぞれ実はある年から増加に転じている。それは1999年、日本で初めてSSRI系の新薬が発売された年だ。

 90年代初頭、SSRIは従来と効き目が変わらないのに副作用が少ないことから「奇跡の薬」とされ、米国でも急成長をしていた。大手製薬会社は、日本の市場で「うつは心の風邪」というキャッチコピーとともに「メガマーケティングキャンペーン」を展開。従来考えられていたような社会的に恥ずべき疾患ではないと思わせることに成功したのだ。うつのハードルが低くなり、患者も増えて、薬価も高い新薬は製薬会社にとって大きなビジネスとなった。医療関係者は、「あるときから精神科の廊下にMR(医薬情報担当者)が並ぶようになった。特に外資系のMRにはきれいな女性が多かった」と語っている。

 ここで展開された「メガマーケティングキャンペーン」では、誤解を生んだ部分もある。「うつは心の風邪」とされたが「風邪薬は何日か服用するだけだが、SSRIは何年にもわたって処方され続けることになる可能性がある」。また、被験者の自殺企図のリスクを増幅させる副作用を故意に隠していた疑いも明らかになっている。

 いずれにせよ、SSRI登場後に世界的に処方数が急増しているのだ。うつ病でない人まで簡単にうつ病と診断されるような時代を迎え、うつが急増した。こうなると、うつの診断書が免罪符になり「負荷の低い業務に甘んじる低空飛行社員が増える」(『人事部長座談会「このままでは会社はうつだらけ」』)との懸念もある。本来、治療すべきうつの人々に、製薬会社のビジネスで生み出されたうつの人々、さらにブラック企業によってうつとなった人々(特集記事『うつにして辞職に追い込む ブラック企業の手口』)……うつの急増には、さまざまな背景がある。そのあたりの論点をわかりやすく整理している今回の東洋経済は、さすが社会派経済誌というべきものだ。
(文=松井克明/CFP)

松井克明/CFP

松井克明/CFP

青森明の星短期大学 子ども福祉未来学科コミュニティ福祉専攻 准教授、行政書士・1級FP技能士/CFP

うつ急増の背景に製薬企業のキャンペーン、自殺企図リスク隠す~うつを免罪符に怠ける社員ものページです。ビジネスジャーナルは、経済、, の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!