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「預金=安全」の常識が崩壊?インフレ・金利上昇時代、老後資産が“目減り”する危機

2026.01.18 2026.01.17 21:53 経済

「預金=安全」の常識が崩壊?インフレ・金利上昇時代、老後資産が目減りする危機の画像1

●この記事のポイント
・インフレと金利上昇により、「預金=安全」という常識は崩れつつある。資産が増えていても物価上昇に負ければ実質価値は減少する時代に突入した。
・老後資産を守るには、現預金偏重からの脱却が不可欠だ。世界株インデックスや新NISAを活用し、インフレに強い資産構成へ転換する必要がある。
・積立型保険の放置やNISAの出口管理不足は、大きな機会損失につながる。資産の「質」を見直すことが、10年後の安心を左右する。

 長らく日本経済を覆ってきた「デフレと超低金利」の時代が、ついに終焉を迎えた。物価は上昇し、日銀は金融政策の正常化へ舵を切り、私たちは「金利のある世界」に足を踏み入れている。

 一見すると、預金金利が上がるのは朗報のようにも思える。しかし、問題はそれほど単純ではない。インフレが進行する局面では、名目上の金額が増えても、実質的な購買力が下がるという現象が起きるからだ。

 これまで日本人の多くが信じてきた「貯金していれば老後は安心」という成功法則は、いま静かに、しかし確実に崩れつつある。

 いま私たちの資産に何が起きているのか。そして、この激変期を生き抜くために必要な「資産形成の再定義」とは何なのか。

●目次

1年前と比べて初めて見える「資産の真実」

 資産形成を見直す第一歩は、現状把握である。銀行預金、証券口座、iDeCo(確定拠出年金)、保険商品――すべてを一度書き出してみることが重要だ。

 ただし、単に「いくらあるか」を確認するだけでは不十分だ。必ず行うべきなのが、1年前との比較である。

【見るべき2つの視点】

(1)安定資金とリスク性資金のバランス
生活費や緊急時に備える「守りの資金」と、運用に回す「攻めの資金」。この比率は年齢や家族構成によって変わる。にもかかわらず、若い頃に決めた配分をそのまま放置している人は少なくない。

(2)インフレ率(CPI)との比較
仮に資産が年1%増えていても、物価が2%上昇していれば、実質的にはマイナスだ。
日本では家計金融資産の半分以上が現預金とされるが、インフレ下では現金は「安全資産」ではなく、何もしないだけで価値が減る資産へと変質する。

「多くの相談者が“減っていないから大丈夫”と考えていますが、それは錯覚です。インフレ時代には“増えていないこと”自体がリスクになります」(ファイナンシャルプランナー・荒井友美氏)

インフレ時代の基本装備「世界株インデックス」

 現預金の一部を運用に回す際、有力な選択肢となるのが投資信託、とりわけ世界株インデックス型投信だ。

 特定の国や企業に集中せず、世界経済全体の成長を取り込むこの手法は、長期視点で見ればインフレに対する有力なヘッジとなる。

なぜ「世界株」なのか
 ・人口増加と生産性向上の恩恵を受けやすい
 ・一国の景気後退リスクを分散できる
 ・円安局面では外貨建て資産がクッションになる

 日本円だけに資産を偏らせること自体が、いまや大きなリスクになりつつある。

「老後資産形成で重要なのは“当てること”ではなく“続けること”。世界株インデックスは、感情に左右されにくく、長期運用に最も向いた選択肢の一つです」(同)

見落とされがちなNISAの「出口戦略」

 2024年から始まった新NISAは、非課税期間が無期限化され、制度としては大きく進化した。しかし、注意すべきは旧NISA口座の扱いだ。

含み益が出ている場合
 一般NISAの非課税期間は5年。期限が迫っている場合、非課税のまま売却し、新NISAで買い直すことで、以後の運用益をすべて非課税にできる。

含み損がある場合
 慌てて売る必要はないが、投資対象そのものの成長性を冷静に見極める必要がある。「何となく保有」が最大の損失につながる。

「NISAは“買う制度”だと思われがちですが、本当は“出口管理”が重要。非課税の恩恵を最大化できるかどうかで、老後資産に数百万円の差が出ることもあります」(同)

盲点になりやすい「積立型保険」の存在

 資産形成の相談現場で非常に多いのが、若い頃に加入した養老保険・学資保険・終身保険がそのまま放置されているケースだ。

 これらは当時の予定利率で設計されており、現在のインフレ率と比べると、実質利回りが大きく見劣りすることが少なくない。

見直しのポイント
 ・解約返戻金を把握する
 ・その資金を新NISAで運用した場合の将来差額を試算する
 ・保障と貯蓄を分離する

 死亡保障は掛け捨て、貯蓄は運用へ。この分離こそが、金利上昇局面における合理的な家計設計だ。

「保険は悪ではありません。ただし“貯蓄目的の保険”をインフレ時代に持ち続ける合理性は、以前より大きく低下しています」(同)

10年後の自分を守るための決断

「金利のある世界」への移行は、単に預金金利が上がるという話ではない。それは、資産の“量”ではなく“質”が問われる時代の到来を意味する。

 過去の成功体験に縛られ、思考停止に陥ることこそが、老後における最大のリスクになりかねない。今こそ、自分の資産を総点検し、インフレに負けないポートフォリオへと組み替えるべき時だ。その一歩を踏み出すかどうかで、10年後の安心は大きく変わる。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)