●ブッフェ・スタイルは“おいしい”ビジネス
こうして、ホテル側も「おもてなし」の精神は二の次となり、例えば、コストカットしやすいブッフェ・レストランが氾濫するようになる。
「ブッフェ・スタイルにする第一の理由は、客が自ら料理を取りに行くのでサービスをする手間が省けるからなのだ(略)サービススタッフの数が少なくて済み、人件費が安く上がるため、こぞってブッフェ・スタイルにする」。さらに、「いちいち客の注文を書きとる必要もないし、発注ミスもない」ため、トラブルも減らせる。
メニューは決まっていて、余分な食材を仕入れる必要もない。しかも、ランチで4000円前後、ディナーなら6000円前後の料金を得られるという、ホテルの親会社にとって“おいしい”ビジネスなのだ。
政府は観光立国を目指す方針を掲げているが、劣化した日本のホテルの現状で、世界中から訪れる観光客を受け入れることはできるのか。
●ビジネスホテル比較
4月に出版された『ホテルに騙されるな!』(瀧澤信秋/光文社新書)は、経営コンサルタントでホテル評論家の著者が、ビジネスパーソン向けの「イン」と称される宿泊特化型ビジネスホテルを中心に、失敗しない選び方を紹介している。
宿泊特化型ホテルは4000~5000円という格安の宿泊料金だが、客室面積は狭い。法令の下限は9平方メートルだが、インは9~12平方メートルが一般的だ。中にはスーツケースすら置けないほど狭い部屋もある。安普請のために隣室の物音や水回りの騒音といった問題もある。
「人気宿泊特化型ホテルチェーン徹底比較」の章では、4大ホテルチェーンを比較している。実際にデスクにパソコンを広げ、「仕事環境」をチェックすると「スーパーホテルが好印象。デスクもチェアも、ビジネスユースとしての使用に十分堪えるサイズと機能性だった。コンフォートホテルと東横インがそれに準じるが、アパホテルのデスクはノートパソコンを置くのもギリギリの面積だった」。
また、「無料朝食」は東横イン、コンフォートホテル、スーパーホテルが提供しているが、「コンフォートホテルが抜きん出ており、稲荷寿司も含めた数種類のおにぎり、十数種類と豊富なパン、スープも2種類などメニューが充実。朝食会場も窓が大きくとられ、明るい雰囲気。これで無料とは満足度が高い」。
東横インは「隣室の水流音」、アパホテルは「狭い客室」がマイナスポイントだという。著者の主観的な比較ぶりが気になるが、安さにはそれなりの理由があるといったところだろう。
●おすすめは旧態型シティホテル
なお、かつて人気のあった「旧態型シティホテル」がコストパフォーマンスの面から見ると優れており、狙い目だと同書の著者はいう。
「インターネットの予約サイトを利用するユーザーが急増したことにより、ホテル間の競争はさらに激しくなり、特に旧態型シティホテルで非常にお得感のあるプランを打ち出している」
「このようなホテルは、施設の充実度や客室のクオリティはもちろん、ゲストのリクエストにはすべて応えるという基本的な姿勢があるので、人的サービスにしても贅沢な気分が味わえる。また、施設の老朽化が目立つとはいえ、屋内プールやジム、大浴場やサウナなど、充実した設備を持ったホテルも多く、それらを宿泊者料金で利用できる場合が多い」のも魅力だ。
結論としては、鉄道系ホテルを避けて、旧態型のシティホテルを利用するのが賢明ということだろうか。
(文=松井克明/CFP)