これからのマンション住まいには十分な注意が必要なようだ。というのも、住宅ローンの返済はおろか、マンションの管理費や修繕積立金が払えずに滞納するという事態になりかねないからだ。
「サンデー毎日」(毎日新聞社/11月30日号)の記事『「貧困老後」の現実 持ち家が老後を破壊する』では、こんなケースを紹介している。
現在60代のある男性は、10年前に老後を過ごすために約1000万円の中古マンションを購入した。ところが、数年前に不況のあおりで商売は廃業し、月数万円の住宅ローンを払うのがやっとという状態で月額2万5000円の管理費まで手が回らなくなり、滞納額は修繕積立金も含め100万円を超えてしまった。ついには管理組合から競売を申し立てられたため、競売前に不動産業者を通して任意売却。500万円で売れたものの住宅ローンは数百万円残り、賃貸住宅に住むことになった。
中古マンションは、老朽化するほど大規模修繕工事にもお金がかかるようになる。このため、区分所有者一人当たりが払う修繕積立金も高くなりがちなのだ。しかし、区分所有者の高齢化も進んでおり、できるだけ出費は避けたいのが本音だろう。とはいえ、出費を抑えれば、マンションのスラム化が加速する。さらに、高額購入、退職金の減額、リストラ、病気、離婚……思いもかけないかたちで破産寸前になってしまい、滞納額ばかりが膨らんでしまうのだ。
「国土交通省が5年ごとに実施するマンション総合調査(2013年度)によると、60代以上が世帯主である割合は5年前に比べて10ポイント以上増えて5割を超えるなど、マンション世帯の高齢化が急速に進んでいる。管理費や修繕費の滞納を抱えている管理組合は4割弱あり、築数十年という古いマンションほど滞納世帯の割合が高い」(同記事より)
今後は、滞納が多いマンションは中古市場での売買の際に敬遠されかねず、売却時の資産価値に影響が出ることを避けるために、滞納があると早い段階で管理組合が競売を申し立てるケースも出てきているという。事実上の追い出しだ。
●近隣住民の高齢化でトラブル増加の懸念
マンション居住者の高齢化による問題も多様化している。同記事では、横浜市のマンションに30年以上住む70代の女性の事例を紹介している。夫は5年前に死亡したが、生前に住宅ローンは完済していた。しかし、4年にわたって管理費を滞納し、累計は100万円を超えた。管理組合が督促しても回答はなく、親族も見当たらない。加えて女性宅のベランダにはゴミが山積みになり、ゴキブリが異常発生しており、近隣住民から苦情が寄せられていたという。