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もちろん、東電が純粋にコストを優先する観点から、今回の入札を先送りしたのならば、それはやむを得ない措置である。このほど会計検査院が公表した試算では、国が福島第一原発事故に関連する損害賠償を円滑に進めるため、東電の支援に投入している9兆円を全額回収するには、30年を超す歳月が必要という。これは、日本国民が30年以上にわたって賠償コストを上乗せした割高な電気料金を負担するよう迫られるということにほかならない。そうした中で、さらに割高な米国産シェールガスを燃料とする火力発電でつくった電力のコストまで喜んで負担する利用者はいないだろう。
しかし、数年先のことを1年かけて応札希望企業に準備させておきながら、その入札期限のわずか6日前なって一方的に先延ばしするのは異常なことだ。相変わらず、東電が殿様商売体質から脱却できていない証左だろう。
何よりも残念なのは、日本の高い電気料金を引き下げる原動力と期待されている米国産シェールガスの本格的な利用の出鼻を挫かれたことである。もともと温暖化ガスの排出対策上は弱みがあっても、コストを考えれば、当分は石炭火力発電が有利と考えている事業者は多いのだ。今回のように、土壇場でキャンセルする事態が起きると、供給準備が進んでいたはずの天然ガス火力発電のプロジェクトを中止するところが出て、天然ガス火力発電全体の普及を阻害する恐れもある。
東電には、入札延期に至る過程で、もっと丁寧に説明責任を果たす義務があった気がしてならない。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
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