連続テレビドラマ『黄昏流星群』(フジテレビ系)の第1話が11日に放送され、平均視聴率は7.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だった。このドラマは、弘兼憲史による同名の漫画を原作に、「人生の折り返し地点を通り過ぎた男と女が図らずも落ちてしまったあらがえない運命の恋」を描くとされている。
「運命の恋」といえば聞こえはいいが、要はいい年したおじさんとおばさんが繰り広げる不倫ドラマである。当初から視聴者を選ぶ題材ではあるが、不倫ドラマはヒットする時はヒットするのも事実。「意外と、どちらに転ぶかわからないぞ」と思いつつ、視聴を始めた。
観てみると、これが意外に悪くない。主人公の瀧沢完治(佐々木蔵之介)は、銀行員としてひたすらまじめに業務に励み、支店長にまで登り詰めた。本人も周囲も、いずれ本店の幹部になるのは間違いないと思っている。本仮屋ユイカ演じる秘書があまりにもわかりやすく誘惑してくるものの、「銀行員に不倫はご法度」と自分に言い聞かせ、そっけない態度を取るのもおもしろい。この辺りの状況説明がテンポよく描かれたため、すんなりドラマに入っていくことができた。
妻の真璃子を演じるのは、中山美穂。あまりにも完治が忙しいので夫婦の会話もほとんどないが、銀行員一筋でまじめに働いている夫を信頼しており、特に不満はなさそうだ。真璃子の友人役として八木亜希子が登場し、たわいのない話を繰り広げるのも映像的に楽しい。
ところが、完治に突然、出向の内示が出たことで状況は一変。親しくしていた幹部がパワハラで訴えられたからという理不尽な理由で左遷されることにショックを隠せず、完治は「自分の人生はなんだったのか」と声を上げて泣き出した。
この辺りでちょっとドラマとしての雲行きが怪しくなってきた。いくらなんでも、50歳前後のおじさんが路上で人目もはばからずに泣いていたら怖すぎるし、そこに激しい雨が降ってくる演出もベタすぎる。その雨があまりにも不自然でCGっぽいのも気になる。
その後、完治はふらふらと居酒屋に立ち寄り、なぜかグラスの氷からマッターホルンを連想し、「スイスに行こう」と突然、思い立つ。次の瞬間、完治の姿はスイスにあった。なかなか雑な展開である。吹雪の中、ゴンドラに乗り込むと、ひとりの日本人女性が乗り込んできた。これまた出会いが雑である。展開も雑だが、吹雪のマッターホルンを表現したCGも雑で、「なぜ無理やりスイスなんかに行く設定にしたんだろう」と気になって仕方がない。
完治は、目黒栞(黒木瞳)と名乗るその女性と意気投合するも、強引にキスを迫ったせいで逃げられる。マジメそうに見えていたのに、そんなエロキャラだったのか。ということは、本当はあのエロそうな秘書にも手を出したかったのに、支店長の座を捨てるのが怖くて我慢していたということなのだろう。確かに、「浮気したくないわけじゃないけど、損得を考えたら割に合わないからしない」という人もたくさんいる。それで理性が保てるのなら、それもいいだろう。
だが、家に中山美穂がいるのに、それより明らかに年上のおばちゃんにふらふらっと手を出そうというのはどうなのか。「運命の恋」などとうたっているが、要は誰でもよかったようにしか見えない。ちなみに、この翌日の完治が栞を探す場面は、今どきなかなかお目にかかれないほどのあからさまな合成で、背景にマッターホルンが登場していた。もう一度言うが、なぜ無理やり行き先をスイスなんかにしたのだろうか。別に日本のどこかの山でもストーリーの進行上、なんの問題もなさそうなのだが。
日本に帰ってきた完治は、出向先として伝えられた倉庫会社の様子を見に出かける。ここでなぜか彼は、まず社員食堂を訪ねてカレーを注文するという意味不明な行動に出る。食券を渡してカレーを受け取ろうとした彼は、厨房の職員がスイスで会った栞であることに気付く。なんなんだ、この展開は。街で会ったのならまだしも、出向先にたまたま勤めていたなんてことがあってたまるか。栞の立場にしてみたら、いきなりストーカーが現れたようなものである。旅先で急にキスされそうになって逃げたら、ストーカーが勤め先を捜し当てて押しかけて来たとしか思えない。
案の定、栞は完治を後にして逃げるように退勤した。「そりゃ、そうだろう」と思ったら、なぜか駅のエスカレーターですれ違う。完治があわてて後を追うと、なぜかご丁寧に通路で待っていた。逃げたいのか逃げたくないのか、どっちなのだろうか。完治が名乗ると、栞も笑顔で自分の名前を彼に教えた。何がしたいのかよくわからないが、どっちもどっちのお似合いのバカップルになれそうだ。
一方その頃、完治の妻・真璃子は庭を手入れしていたが、誤ってバラのトゲで指先を切ってしまう。すると、いきなりスーツ姿の男が現れ、彼女の腕を強引に引いて屋外水栓に導く。真璃子が手を洗うと彼は白いハンカチを取り出し、彼女の指を優しく包んだ。彼は、完治と真璃子の一人娘・美咲(石川恋)の交際相手である弁護士の日野春輝(ジャニーズWEST/藤井流星)だった――。