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石堂徹生「危ない食品の時代、何を食べればよいのか」(10月25日)

死を招く危ない食品、食の不祥事…“リスク分析システム”は、なぜ機能不全に陥った?

文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト
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 なぜ国際的な合意によるリスク分析システムが、機能不全に陥っているのか。少なくとも、リスク分析システムが社会全体をカバーし切れず、システムのどこかに抜け穴があることを示しているのではないか。

●おおむね安心して食べるには…

 私たちは何としてでも、その抜け穴を探り当てる必要がある。食の不安を抱えながら、危ない食品を食べ続けるわけにはいかないからだ。ここで、改めて「食べること」の意味を再確認しておきたい。

 こんな話がある。月面着陸を目指すアポロ計画(1961年)の際、米国航空宇宙局(NASA)は宇宙飛行士の食事のためにチューブ式の完全栄養食品を開発し、それによって宇宙飛行士は無事帰還。チューブ式は「米国栄養学の勝利」と称賛されたが、肝心の宇宙飛行士たちはチューブ式の食事ではストレスになると訴え、結局、その研究は頓挫したそうだ【編注2】。

 一方、80年代半ば、日本の文部省の特定研究【編注3】で、食品の機能性が世界で初めて明らかにされた。食品には、生存に必要なビタミンやミネラルなどの栄養補給機能だけでなく、おいしさを味わう感覚機能があるという。チューブ式には感覚機能の代わりに、ストレス蓄積のマイナス機能がある。噛んで飲み込んでおいしさを味わってこそ、ストレスも解消され、明日への活力も湧く。

 危ない食品では栄養もおいしさも損なわれがちで、病どころか、時に死を招く。つまり、これは毒物に近い。本連載では順次「危ない食品の正体と多様性」や「戦後日本と危ない食品の深い関係」「なぜ食品は工業製品並みに品質管理ができないのか」などのテーマに迫る。その最終的な目標は、おおむね安心して食べられる日本人の食の状況を築く、そのための道筋を探ることにある。
(文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト)

【編注1】中島隆・内閣府食品安全委員会事務局次長「食肉の生食による食中毒のリスクについて」(11年8月23日、「食の安全フォーラムinとやま」ネット掲載)などを参考。

【編注2】中村丁次・神奈川県立保健福祉大学学長「時代とともに変化する日本の『栄養』」(『ヘルシスト』ヤクルト本社、11年5月10日)

【編注3】文部省の特定研究(藤巻正夫代表「食品機能の系統的解析と展開」1984~86年)

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