シャープは3日、2015年3月期連結業績見通しを下方修正した。従来の300億円の黒字予想から一転、300億円程度の赤字に陥る。事業の見直しなどで特別損失を今後計上すれば、赤字幅はさらに膨らむ。
これは、シャープの「終わりの始まり」ではないか。というのは、同社の業績経過の経年的な筋が悪いのだ。同社は数年前に存亡の危機に瀕し、新しい資本や融資を求めて苦闘していた。12年3月期には3760億円、13年3月期には5450億円もの巨額赤字を計上した。14年3月期に116億円の利益を計上して息をついたばかりだった(いずれも連結ベース)。回復途上に入ったと思われた直後に今回の赤字予想修正では、支援する銀行団や従業員、さらには株主などの落胆は大きいだろう。
そして今回の業績下方修正は、円安などの環境悪化など一過性のものではなく、その事業構造に本質的な問題があることを窺わせる。
まずシャープが主要事業として残している液晶テレビだ。一時は「世界の亀山ブランド」などと自尊していたが、その凋落ぶりはひどい。例えば米テレビ商品批評誌「LCD/TV and LED TV Buying Guide」の15年1月末「トップ10ベストセリングLCD/LEDテレビ」ランキングにシャープ製品は1つも見られない。世界の主要市場である北米市場で、すでにその存在感は失われた。
また筆者は1月末に香港を訪れた折に家電売り場などを見てきたが、シャープのロゴが目に留まることはなく、「SHARP」のネオン広告も撤去されていた。アジアでの存在感は薄くなる一方だ。そもそも「SHARP」というブランドそのものが、「グローバル500ブランド」(ブランド・ファイナンス調査)では、
12年:171位
13年:208位
14年:278位
と、凋落の一途なのだ。
液晶パネルの他メーカーへの供給も、うまくいかなくなってきた。小米(シャオミ)など中国のスマートフォンメーカー向けに中小型液晶パネルの需要が伸びていたのだが、それらの顧客ではモデルチェンジのサイクルが短いうえに、頻繁に供給先を切り替える。かといって、テレビ関連事業に代わって柱となるような大型商品が出てきたわけでもない。先日、日刊工業新聞社が発表した「2014年 十大新製品賞」でシャープの「赤外線カラー暗視カメラ」が「日本力(にっぽんぶらんど)賞」を受賞したが、ビジネスボリューム的には取るに足らない。
●心もとない高橋社長のリーダーシップ
そしてこの難局において、高橋興三社長のリーダーシップがいかにも心もとない。