かつて「秒速で1億円稼ぐ」と豪語、インターネットビジネスで多大な成功を収める「ネオヒルズ族」の代表格として、そのバブリーな生活スタイルが脚光を浴びた与沢翼氏が、自身が経営する企業の法人税未納や実質経営破たん状態にあることを突如公表してから約1年。
このまま消えていくのかと思われた同氏だったが、報道によると、どうやらシンガポールに移住し、新たに始めた投資ビジネスで再起を果たしたとされる。
しかし、その商才と生命力は注目に値するとしても、与沢氏の言動からはいかんともぬぐいがたい、ある種の“胡散臭さ”を感じる人は多いはずだ。彼はその絶頂期から転落、そして再帰の間で何を考え、今何をしようとしているのか。
ビジネス書作家として数々のベストセラーを持つ水野俊哉氏のルポ『マネー&フリー 僕らが楽して大儲けした57の秘訣』(サンクチュアリ出版/刊)は、同氏へのインタビューを通して、その点に鋭く切り込んでいく。
■地方の情報弱者が「情報商材ビジネス」の餌食になる
与沢氏を一躍有名にしたのは「インターネットビジネス」での成功だ。
特にネットを使った「金持ちになる方法」「成功法則」といった情報商材の販売が知られているが、いずれも数十万円~数百万円と、その内容と比べると高額で「誰が買うんだろう」という印象が残る。
しかし、彼の支持層は確実に存在したようだ。
与沢氏によると、彼のファンになるのは、地方で暮らし、刺激のない生活に退屈しきっている人。目標や夢が特になく、都市部の人ほど情報リテラシーが高くない。こういう人ほど、狂信的に与沢氏を信じ、彼の提供する商品に金を注ぎ込んでいたというのが真相のようだ。
ただ、月収の最高額は5,000万円ほどで、さすがに「秒速で1億円」とまではいかなかったようだ。
ところで、与沢氏といえば、真鍋昌平氏の人気漫画『闇金ウシジマ君』で明らかに同氏をモデルにしているとわかる人物が登場し、そのビジネスの裏側が描かれたことが記憶に新しい。
実際、与沢氏は真鍋氏の取材を受けたそうだが、あそこまで克明に描かれるとは思っていなかったようで「あれは一歩間違えると人権侵害」「誰が見ても僕なので、名誉棄損レベル」と苦笑しつつ話している。特に与沢氏をモデルにしたと思われる「天生翔」の壮絶な転落は、与沢氏本人ですら「もういいんじゃないか」と思うほどだったと回想する。
気になる与沢氏の今後だが、今シンガポールで展開している株式トレードとカジノですでに月1,000万円ほどを稼ぎ出している、と事実かどうかは定かではないがネットでは喧伝している。
本書では、与沢氏をはじめ様々なインターネット起業家たちの実像に迫り、今もなお「手軽に大金を稼げる」と一部の人を引きつけてやまない「インターネットビジネス」の本質と裏側に迫る。
「バカが1000人に3人いれば儲かる」「金とは幻想」など生々しい言葉が並び、読み物として非常に読み応えがあるとともに、安易にこのビジネスに手を出そうとする人への警鐘にもなるだろう。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。