ほど人気の『バウハウス』のHPより
シェアハウスは、複数の入居者がそれぞれ個室を持ち、キッチンやリビング、バス、トイレなどの設備を共用しながら暮らす共同住宅だ。似たような言葉として「ゲストハウス」というのもあるが、こちらは主に旅行者などが対象の短期滞在用だ。
日本でシェアハウスが広く知られるようになったのは最近だが、米国のテレビドラマ『フレンズ』にも出てくるように、欧米各国では昔から一般的な居住形態である。海外では若者が家庭から離れて自立する際、日本のようにワンルームマンションや1Kアパートなどを借りるのではなく、同年代の何名かが共同でマンションや一戸建て住宅を借りるケースが多い。兄弟や親しい友人同士で住む「ルームシェア」に対し、外部の事業者により管理・運営され、まったくの他人同士が住む施設を「シェアハウス」と呼ぶ。
シェアハウス事業の具体的な方法は、専有面積60~100平方メートル以上の物件をオーナーからできるだけ安く借りて、1物件に10人以上住めるようにリフォームして、貸し出すという流れになる。「入居者からもらう家賃」から「オーナーに払う家賃+運営にかかる経費」を差し引いた分が利益となる。業者は、物件の確保から内装の工事、入居者集客、物件管理と、運営物件に関わることは上流から下流まで全業務を担当することになる。自社物件を買うのはリスクが大きいため、オーナーからサブリースした物件をシェアハウス化するというのがミソだ。物件を安く借りるには、古い物件のほうが好都合で、築30年でも40年でも問題はない。どんなふうにリフォームするかというアイディアこそが勝負である。独自性のあるシェアハウスに人気が集まるのが最近のトレンドだ。
例えば、昨年7月、東京・港区元麻布にオープンした「元麻布農園レジデンス」はその格好の例だ。元麻布といえば、山手線の真ん中に位置し、古くから東京有数の高級住宅地として有名だが、そこに農園がついたシェアハウスがある。玄関を出ると畑が広がり、毎朝水をやって成長を見守りながら育てた有機野菜は、住人みんなで食べている。ここは以前、外国人向け住宅で、4世帯が住んでいた建物だった。それが17部屋と36畳のコミュニティラウンジにリフォームされた。自然とのふれあいを取り戻すこと、そして、地域交流の拠点となるシェアハウスをコンセプトとしており、近隣の子供たちが野菜づくりを体験できる『キッズ土育』やバーベキューパーティーなど、さまざまなイベントを開催している。
●独特な運営ノウハウが必要なシェアハウス
シェアハウス事業を展開しているのは中小の不動産関連企業やベンチャーが多く、どちらかといえば大手が参入しにくいニッチな市場である。その理由は、シェアハウスの管理・運営およびテナント募集には独特なノウハウが必要であり、一般賃貸より確実に手間がかかるからだ。よって、シェアハウスを扱ったことのある業者はほんのひと握りというのが現状だ。
シェアハウスの「バウハウス」シリーズを東京・横浜の5カ所で運営する大関商品研究所は、業界では有名な会社で、もともとは店舗設計・プロデュースなどを手がける会社である。いずれのシェアハウスも、中古住宅をリノベーションした個性的な空間が特徴だ。
例えば、「バウハウス南千住」は、以前は社員寮として使われていた築30年以上の典型的な和風木造建築。室内はアンティーク調の装飾が施してあり、和洋折衷の「大正浪漫」、あるいは昭和の風情ともいうべき佇まいになっている。8月末現在、12ある部屋はすべて満室だった。空き部屋が出て募集を出すと、すぐに埋まるという。同社の担当者は、このビジネスについて「古いものを生かしながら、いかに付加価値をつけて新しい形にするかがポイント」と語る。