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会社に労働時間の「粉飾」を強いられ、異常なサービス残業に励む日本人

文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表
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会社に労働時間の「粉飾」を強いられ、異常なサービス残業に励む日本人の画像1「Thinkstock」より
 先日、神奈川県横浜市のマンションが傾斜していた問題で、杭打ち工事を行った旭化成建材によるデータ偽装が発覚しました。また、タカタは欠陥エアバッグの原因究明をめぐり、自動車メーカーに虚偽の報告を行ったとされています。

 本来、嘘をついてはならないデータが、実際は嘘で塗り固められていたわけです。これらの行為は、通常であればあり得ないことですが、「会社のため」「組織のため」といった言葉を言い訳に、みなさんの身近でも行われている可能性があります。

 例えば、出勤時や退勤時にタイムカードで打刻をしている人も多いでしょう。 私が公務員だった時には、出勤時間と退勤時間を手書きで記録し、印鑑を押していましたが、まるで定時に出勤、退勤していたかのように見せていました。

 民間の会社でも、一般的に管理監督者には残業代が支払われないため、出勤簿を手書きと印鑑で管理しているケースもあると思います。法律上、残業代が支払われないのは、労働時間をはじめ、自分の業務に関して裁量と権限を持っている人です。そのため、基本的にはタイムカードを打刻する必要はないのです。

 そもそも、タイムカードを打刻する出勤時というのは、いつのことを指すのでしょうか。食品工場や飲食店の場合、出社して私服から作業着に着替えた後ではなく、出社時に打刻すべきです。退勤時も、作業着から私服に着替えた後で打刻すべきなのです。

 食品工場で、作業着に着替え、髪の毛やごみなどの異物を取り除き、手を洗ってからタイムカードを打刻する……。これは、本来の出勤時間を「偽装」しているといえます。

「作業着を着替えるところから、作業時間ではないのですか」と声を上げる人もいるでしょう。しかし、それに対して「ほかの人もそうしているのだから」「そんなまじめにやっている工場なんて、どこにもないよ」「いつまで青臭いことを言っているんだ、君も少しは大人になれ」などと言われるかもしれません。

 はじめは「おかしい」と思っても、職を失うことを恐れ、そういった社風に染まり、次第に声を上げなくなってしまうのです。

 日本ではよく、「原理原則の通りに行っていては、世の中が回らない」「商売と屏風は、曲がらないとうまくいかない」などといわれます。

 アメリカの工場では、「あと1文字打てば、レポートが仕上がる」という場合でも、定時になれば「お疲れさまです」と従業員は席を立っていました。初めてその姿を見た時は異様に感じましたが、法律上は正しい行動といえます。

 旭化成建材によるデータ偽装を非難している人たちは、タイムカードの管理をはじめ、社会生活の中で「会社のため」「みんなやっているから」を言い訳に、「偽装」を行っていないと言い切れますか?
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)

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