風邪薬は危険?四肢能力低下など重篤な副作用で死亡8例、かえって完治の妨げに
市販薬は「大衆薬」などとも呼ばれますが、正式には「一般用医薬品」といい、OTC薬とも呼ばれています。OTCとは「Over The Counter」の略語で「薬剤師が説明してカウンター越しに出す薬」という意味です。これに対し、医師が出す処方薬は「医療用医薬品」といいます。
処方薬は効き目が強く、市販薬は効果が穏やかだから、市販薬のほうが副作用はないと思っている方も多いと思います。
たしかに、市販薬は処方薬に比べて作用の穏やかなものが多くみられます。副作用のリスクを避けるために、処方薬に比べて主成分の量を半分から3分の1程度に減らしている薬が少なくないからです。ただし、量は違っても主成分は処方薬と変わりませんので、「処方薬は副作用があって市販薬には副作用がない」とはいえません。
実際に、市販薬を服用して亡くなる方や、重度の副作用を被ってしまう方が毎年いるのです。厚生労働省は、所管の「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」による副作用の症例数の集計を公表しています。現時点で最新のものは2009~13年版で、これは消費者庁から発表されています。
この5年間で、市販薬のメーカーから報告された副作用の報告数は合計1225例です。風邪薬は400例、熱さましや痛み止めにあたる解熱鎮痛消炎剤は279例、漢方薬は134例です。このうち死亡数は15例報告されており、内訳は風邪薬8例、解熱鎮痛消炎剤3例、漢方薬1例です。
市販の風邪薬による死亡の報告数は、大量に売れている中での8例ですから、確率でいえば小さい数字かもしれません。しかし、この8人はほかの多くの服用者と同じように「早めになんとかしよう」と考えて市販薬を飲んだ結果、命を落としたのです。
また、この市販薬による死亡者数は、厚生労働省が把握しているだけの数です。例えば、市販薬の服用後に呼吸障害を起こして突然死してしまったとしても、家族が市販薬の服用を把握していなければ、死因が市販薬の副作用だとは誰も気づけません。
副作用報告では、5年間で重い後遺症が残った例も15例報告されています。
スティーブンス・ジョンソン症候群は、高熱や全身倦怠感などの症状を伴って、口唇・口腔、眼、外陰部などを含む全身に紅斑、びらん、水疱が多発する疾患です。薬剤やウイルス感染などがきっかけとなり、免疫学的な変化が生じ、主として皮膚・粘膜に重篤な病変がもたらされると推定されています。
ギラン・バレー症候群は、急速に発症する左右対称性の四肢筋力の低下と腱反射の消失を主徴とする病気です。発症の1~3週間前に咳や発熱、咽頭痛、頭痛、下痢などの感冒(感染)症状があることが多いため、各種ウイルスや細菌による感染が引き金となり免疫学的変化が生じて発症すると考えられています。しかし、薬剤の副作用による発症例も報告されています。