風邪薬は危険?四肢能力低下など重篤な副作用で死亡8例、かえって完治の妨げに
風邪を引いたら薬ではなく休養
これらの症状は、風邪が原因で現れたと考えている方の中に、実は「風邪薬」が原因で引き起こされているケースがあるかもしれません。
風邪薬が原因で風邪の諸症状が出るとは考えにくいものです。そんな“薬に対する盲目的な思考”を築いてしまう原因の一端は、市販の風邪薬のCMにもあると考えられます。
風邪を引きやすい季節になると、私たちはテレビをつけるたびに風邪薬のCMをくり返し見せられます。「くしゃみ3回、◯◯3錠」「効いたよね、早めの◯◯◯◯」といったキャッチーなフレーズは、症状の出始めに薬を飲んでおけば、翌朝にはスッキリ爽快、風邪を吹き飛ばせるようなイメージを視聴者に抱かせます。
しかし、CMは「早めに薬を飲めば風邪が治る」という“イメージ”を植えつけるための映像です。実際にCMでは、「風邪が治ります」とは一言も言っていません。
よく知られているように、ほとんどの風邪はウイルスが起こすもので、これらのウイルスを殺す薬はありません。体内に入ってきた風邪ウイルスを殺すのは、自然治癒力を形成する免疫細胞の数々です。体に風邪ウイルスが侵入してきたとき、多種多様な免疫細胞は、連携して働くことによって病原体の増殖を抑え込み、消滅させるための闘いをくり広げます。
体に現れる不快な症状は、その際に生じる炎症反応なのです。咳やのどの痛み、鼻水、嘔吐、下痢などは免疫細胞がウイルスと闘っている証しです。これらの炎症反応が起こらなければ、ウイルスはたちまち増殖してしまうでしょう。
ところが、風邪薬の多くは快復に向けて欠かせない免疫反応を抑え込んでしまうものです。薬によって、つらく不快な症状は一時的に軽減されるため、本人は「風邪が良くなった」と思うかもしれません。しかし、ウイルスは体内でくすぶり続けています。
免疫細胞を活性化させるには、しっかり休養を取ることが大切なのに、症状を抑え込んだことで安静にせずに無理を重ねてしまう人もいるでしょう。風邪薬に頼っている人ほど症状がすっきり取れにくいのは、こうした理由があるからです。
テレビCMなどをくり返し見ていると、「風邪薬を早めに服用」することこそ風邪を治す一番の方法だと思い込んでしまいがちですが、体に備わっている免疫細胞をしっかり働かせるためにはどうしたらよいかをしっかり考えてください。私たちには「身体の声を聞く」という生物本来の能力があるのです。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)