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トニックシャンプーは使用NG!ハゲや抜け毛の恐れ、危険な成分配合、毛穴の油は必要

文=小澤貴子/東京美容科学研究所所長
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 まだまだ暑さの残るこの時季、トニックシャンプーが手放せないという人も多いのではないでしょうか。「トニックシャンプーを使うと、すっきり爽快!」「アブラをよく落としてくれるから毛が生えてくるはず」と思っていませんか。

 そんな人は10年後、20年後を大いに心配してください。アブラの落としすぎは、抜け毛やハゲる原因と考えられているからです。「そんなのは聞いたことがない」というのは、これが業界最大のナイショの話だからです。今回は、そんなタブーに挑戦しましょう。

 そもそも、英語における「トニック(Tonic)」とは、「肉体的、精神的に元気づける」「強壮剤」という意味です。「トニックウォーター」は、苦みのある薬草や柑橘を入れた炭酸飲料で、これも強壮剤として飲まれていました。また、「ヘアトニック」は、養毛剤と訳されます。

 化粧品の分野では、トニックは化粧品の効果効能としては「フケ、かゆみを抑える」成分です。清涼感や爽快感を与えることで、かゆみなどを防ぎます(『化粧品事典』<日本化粧品技術者会/丸善>参照)。成分としては、メントール、カンフル、トウガラシチンキ、グリチルリチン酸ジカリウムなどです。これらの成分があると、スーッとする感じ(爽快感)を与え、さらに菌の過剰な繁殖によるフケを抑えたり、消炎作用や血管拡張の作用によって血流も促進されます。

 また、いわゆる薬草といわれるような植物成分を含むことも多いです。皆さんは果物や植物にカブレて、皮膚がかゆくなった経験がありませんか。化粧品に含まれる植物の成分は、通常はカブレまでは起こしませんが、少し刺激があるので部分的に血が集まりやすく、血流が高まります。抜け毛や薄毛を防ぐためには、毛根にしっかりと栄養を届けてあげること、つまり血流が重要です。これが、本来のトニックの役割です。

トニック+シャンプー=ハゲる?

 しかし、「トニックシャンプー」の定義となると、誰も知りません。正直に言うと、売れるからつくられた“造語”です。もともとトニックは、現在のような強い洗浄力を持つシャンプー剤とは一緒に使用されていませんでした。なぜなら、実は養毛には「刺激」と「アブラ」の2つが必要だからです。アブラの落としすぎはよくない――、これは毛髪科学の常識です。毛根の細胞にダメージが加わると、抜け毛やハゲる原因になるのです。毛根へのダメージを防いでいるのが皮脂のアブラです。

トニックシャンプーは使用NG!ハゲや抜け毛の恐れ、危険な成分配合、毛穴の油は必要の画像1石けんシャンプーで週に1回程度洗髪している40代女性の例(撮影=国立三重大学医学部) ※この現象はすべての方にあてはまるものではありません
トニックシャンプーは使用NG!ハゲや抜け毛の恐れ、危険な成分配合、毛穴の油は必要の画像2合成シャンプーで毎日洗髪している45歳男性の例(撮影=国立三重大学医学部) ※この現象はすべての方にあてはまるものではありません

 皮脂は、毛の生えている穴にある皮脂腺から分泌され、毛髪は毛根にある毛母細胞でつくられています。ここで注意していただきたいのは、強すぎる洗浄成分の合成界面活性剤は、細胞にもよくないということ。それは、細胞自体がリン脂質の二重構造という、こうした成分に弱くできているためです。場合によっては、細胞膜に穴が開いたり、内容物が外に漏れ出て細胞が死んでしまいます。

 毛根の細胞にダメージを与えないためには、皮脂のアブラで守る必要があります。血流を高める「刺激」と毛根を守る「アブラ」、この2つがあって初めて本当の意味で毛根が元気になっていくのです。毛根の状態がよくないままでは、薄毛やハゲる心配からは抜け出せません。

 男性用シャンプーコーナーを覗いてみると、どれもが「フサフサに」と謳っています。多くの男性は、べたつきアブラをしっかり取り除いて、そのうえでボリューム髪を熱望しているようです。はたしてトニックシャンプーは、そんな魔法のような願いを叶えてくれるのでしょうか。検証してみましょう。

 商品A(文末に成分表記載)では、「毛穴のアブラもニオイもスッキリ落とす」「育毛剤、育毛トニックの浸透を助ける」「ノンシリコーン処方」などと書かれています。この中身を見て驚きました。全成分構成のうち半分以上が合成界面活性剤です。あまりにも洗浄剤の配合量が多すぎます。また、「ノンシリコーン処方」と謳っていますが、成分には水溶性の合成ポリマー系合成界面活性剤が含まれています。つまり、ノンシリコーン=ノンポリマーではありません。

 商品B(文末に成分表記載)は、医薬部外品ではありません。安価ですが、洗浄力が強すぎて頭皮によくないといわれる「ラウレス硫酸Na」を筆頭に、11種類もの成分が合成界面活性剤です。11種類の合成界面活性剤のうち4種類は、水以外で最も多く含まれている成分ですから、これでは皮脂を根こそぎ取ってしまうと思います。

ハリのある髪に見せかけ、ダメージ蓄積

 さらに注目したいのは、「シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール」という新成分。業界関係者のみぞ知る、原料メーカーの資料に書かれた内容は次のようなものです。

「毛髪・皮膚へ有効成分をぐんぐん浸透させる」「毛髪内部へより浸透させ、毛髪ダメージを改善」という謳い文句です。しかし、化粧品の世界においては、この「浸透」といった類の言葉には、十分警戒が必要です。

 なぜ、「ぐんぐん浸透」すると「毛髪ダメージを改善」するのでしょうか。まずは、そのカラクリをご説明します。

 まず、強い浸透剤によってスカスカの髪の毛に水分や水溶性たんぱくを「ぐんぐん」注入します。そして、髪がぷくぷくに太ったところで、ポリマーでコーティングします。これで、ハリのあるボリューム髪の完成です。つまり、「毛髪ダメージを改善」というのは、一見しっかりした髪に見せかけているにすぎません。その「見せかけ」のために入れられた強い浸透剤によって、知らない間に毛根を守るアブラを失うことや、そうした成分の作用で毛根が傷んでいくことに気がつく人はいないでしょう。

「毛髪ダメージを改善」「ハリ、ボリュームのある髪に」といった言葉は、トニックシャンプーの宣伝でよく使われています。それを耳にした消費者は、毛根が回復して、しっかりとした髪が黒々と元気よく生えてくるイメージを抱くでしょう。しかし、残念ながら、こうした商品でダメージを受けた毛根が根本的に治ることはありません。スカスカになった髪の毛に水を入れてフタをしただけの、いわば張りぼてをつくるだけなのです。その間に毛根は確実にダメージをため続けています。

 本来、トニックで血流促進をさせるような成分は、シャンプーなどの脱脂力の強い洗浄剤とは一緒に使用するべきではありません。毛根や頭皮を守るアブラがない状態でトニックを使えば、刺激が強すぎて毛根が傷むからです。

 断固として言います。もし、あなたが10年後、20年後の自分の髪を考えるなら、トニックの成分はシャンプーと一緒に使わないことです。抜け毛やハゲるのがイヤなら、トニックを入れたシャンプーはダメです。

 確かに、フケは皮脂を好むタイプの常在菌の繁殖によっても増えることがあります。一方で、皮脂腺というのはホルモンで制御されています。皮脂は取り除けば取り除くほど、さらに分泌されてしまうのです。アブラを取りたくても、激しく取ればかえってアブラっぽくなります。そして、気づいた時には毛根にダメージを与えているのです。

 あなたの髪が太くなったのは、トニックシャンプーのおかげで毛根が元気になったからではありません。もちろん、遺伝や食生活の影響は強いですが、自分なりの髪を保つには、毛根を守るアブラを落としすぎないことです。

【商品A:トニックシャンプー(医薬部外品)】
成分:ピロクトンオラミン(殺菌剤)、水、<ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(1E.O.)液>、<ラウリン酸アミドプロピルベタイン液>、エタノール、<アルキルグリコシド>、<ラウリルヒドロキシスルホベタイン液>、<POE(16)ラウリルエーテル>、メントール、<<POE(3)ラウリルエーテル>、ユーカリエキス、<POEアルキル(12~14)エーテル>、<塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体液>、<塩化トリメチルアンモニオヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース>、無水クエン酸、BG、香料、青色1号

【商品B:クールタイプのスカルプシャンプー】
成分:水、<ラウレス硫酸Na>、<コカミドプロピルベタイン>、<ポリクオタニウム-10>、<ポリクオタニウム-7>、メントキシプロパンジオール、メントール、バニリルブチル、シメン-5-オール(殺菌剤)、DPG、グリシン、カキタンニン、チャ葉エキス、ビワ葉エキス、ホップ花エキス、キハダ樹皮エキス、ヒアルロン酸Na、ヒバマタエキス、紅藻エキス、褐藻エキス、緑藻エキス、水溶性コラーゲン、アボカド油、オリーブ油、ホホバ種子油、月見草油、<シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール>、硫酸亜鉛、<コカミドMEA>、<ラウレス-4カルボン酸Na>、<コカミドDEA>、<ココイルグルタミン酸TEA>、<ラウロイルメチルアラニンNa>、<ポリソルベート20>、BG、エタノール、グリセリン、クエン酸、クエン酸Na、EDTA-2Na、シクロデキストリン、安息香酸Na、フェノキシエタノール、メチルパラベン、香料

※<>で囲んだ成分は合成界面活性剤

(文=小澤貴子/東京美容科学研究所所長)

小澤貴子/東京美容科学研究所

小澤貴子/東京美容科学研究所

工学博士(応用化学専攻)
1975年生まれ。上智大学理工学部化学科卒業後、応用化学修士課程に進学。修士課程修了後、大手化学会社の研究員を経て、上智大学理工学部化学科非常勤助手として研究に携わる。
その後、祖父の代から続く、東京美容科学研究所に入所、肌と美容の研究の道へ。現在、同研究所にて、化粧品の研究とともに、正しい美容科学の普及に努めている。理美容のプロおよび一般の人々に対して、肌の生理や化粧品についての知識の向上を目指すべく、教育普及活動にとくに力を入れ、全国で講習会や講演を行っている。

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