乳製品は不健康食品…中性脂肪の薬、飲むと死亡率10%増との調査結果
健康診断などで「中性脂肪」の値が高いと言われたら、どうしますか?
病院へ行けば、ほぼ間違いなく中性脂肪を下げる薬が処方されます。病院で使われる薬の代表は「ベザフィブラート」「EPA製剤」「フェノフィブラート」の3つで、最後が一番新しく、もっとも多く使われています。
しかし、この薬については、いくつかの大規模調査で重大な疑義が呈されています。ある調査では、まず糖尿病と診断された9,795人を公平に、ほぼ同数の2グループにわけ、一方にフェノフィブラート(実薬)を、また他方には偽薬(プラセボ)を毎日服用してもらいました。
プラセボとは、本物そっくりにつくった偽薬のことで、その役割は大切です。せっかく2つのグループにわけても、一方にだけ薬を飲ませると、他方の人たちは薬がないことで不安に駆られ、こっそりサプリを飲んだり、運動に励んだりするかもしれません。そんなことが起こらないようにするのがプラセボの役割です。
さて5年後、両グループの人たちの健康状態が比較・分析されました。その結果、実薬グループでは356人が、またプラセボ・グループでは323人が、なんらかの原因で死亡していることがわかりました。本物の薬を飲んだ人たちのほうで死亡率が10%以上も高いという驚くべき結果だったのです。
統計学と呼ばれる理論によれば、このような差が誤差範囲なのか、あるいは確かな差なのかを計算で判定できますが、このデータの場合、確かな差ではなかったようです。しかし少なくとも、この薬で長生きできないことは証明されたといえるでしょう。
時間をかけて病院に通い、お金をかけて薬を飲み続けるのは、健康で長生きしたいからです。だとすれば、この薬を飲み続ける意味がわからなくなってしまいます。いったい、なぜこんな薬が認可されているのでしょうか。その陰には、さまざまな大人の事情がありそうですが、どの薬にも共通していることから、今後の本連載のなかでじっくり検証していくことにします。
乳製品は不健康食品の代表?
海外で行われた多数の調査から、中性脂肪値が高いだけでほかに異常がなければ、将来、病気になることはないことがわかってきました。
中性脂肪値が高くなるのは、体質に加えて生活習慣にその原因があります。中性脂肪値の異常は、生活習慣を改善するだけで治すことができるのです。
そのためには、中性脂肪値を上げやすい食品をまず覚えておく必要があります。
中性脂肪は、「脂肪酸」という栄養素が集まってできた分子です。脂肪酸は、動物性、植物性を問わず脂肪の成分であり、種類もいろいろです。そのうち、「パルミチン酸」「オレイン酸」「リノール酸」の3つが中性脂肪の主な成分で、それぞれ動物性の食品と植物性の食品とで、含まれる割合が異なっています。
脂肪酸が多く含まれる食品は、牛肉や豚肉の脂身、モツ、バター、乳製品、食用植物油などです。意外なのは乳製品です。グラム当たりの含有量は決して多くありませんが、大量に飲んだり食べたりする食品であるため、結果的に中性脂肪値を上げる最大の原因となっています。
乳製品は、日本では体に良い食品の代表のようにいわれていますが、欧米では不健康食品の代表とされているのです。
牛乳が日本人の食生活を改善し、日本人の体格を向上させることに寄与してきたのは間違いありません。しかし、飽食の時代を迎えた現在、乳製品は育ち盛りの子供の食べ物と考え、大人は食べすぎないことです。話題のココナツオイルも、植物性でありながら乳製品に近い成分が含まれているため、要注意です。
私の診察室には、中性脂肪値の高い人がたくさん訪れます。あるとき、検査値が正常上限の10倍も高いという人がやってきました。聞けば「家が酪農で毎日1リットルの牛乳を飲んでいる」とのこと。牛乳をコップ1杯に制限してもらったところ、1カ月で検査値がほぼ正常範囲になりました。
血液中の中性脂肪は、エネルギー源でもありますから、運動によって数値を大幅に改善させることができます。中性脂肪値の異常は、薬ではなく食生活の見直しと日々の運動で治すべきものです。
(文=岡田正彦/新潟大学名誉教授)
【参考文献】:Lancet 2005;366:1849-61.