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石原藤樹「その医療の常識、本当ですか?」

牛乳を飲むと危険?本当?死亡率が約2倍、骨折数が増加との調査結果も

文=石原藤樹/北品川藤クリニック院長
牛乳を飲むと危険?本当?死亡率が約2倍、骨折数が増加との調査結果もの画像1「Thinkstock」より

牛乳は健康に良いのか悪いのか?

 牛乳を定期的に飲むことが、健康に良い食生活である、という考え方は、比較的最近まで世界的に広く認知されたものでした。成長期のお子さんの場合には、身長を伸ばすために有効だと考えられていて、大人になってからは、将来の骨粗鬆症の予防に有効だとされていました。かつては粘膜を保護する、胃潰瘍の治療薬としても使用されていました。カルシウムの摂取のためには、牛乳を含む乳製品の吸収率が高く、効率的であるとも考えられていました。

 しかし、その一方で牛乳は健康に悪いのでは、という考え方も、近年では決して少数派とはいえません。

 牛乳というのはかなり高カロリーの食品で、動物性の脂肪を多く含んでいます。特に大人になっても牛乳を飲むという習慣は、肥満や動脈硬化に結びつく可能性が否定できません。牛乳に含まれる蛋白質のカゼインは、1型糖尿病の原因の1つなのでは、というデータが複数報告されています。一部のがん、特に前立腺がんは、乳製品の摂取量と関連があるとする、これも複数の報告があります。

 牛乳には乳糖が含まれていますが、この乳糖は人間の乳糖分解酵素により、ブドウ糖とガラクトースという2種類の単糖類に分解され、その後に身体に吸収されます。小さなお子さんはこうした酵素を多く持っていて、そのため効率的に乳糖を分解して吸収できるのですが、大人になるとその効力は落ち、吸収される量は減ります。

 そしてこのガラクトースは、比較的少量の摂取においても、動物実験では酸化ストレスを増し、慢性の炎症を惹起して、老化を促進するという複数の報告があるのです。

ガラクトースの健康への害

 ネズミにおいては、体重1キログラム当たり100ミリグラムのガラクトースで、慢性の炎症や老化促進の影響が生じるとされています。この量を人間で換算すると、6~10グラムとなり、概ね1日当たりコップ1~2杯の牛乳を、飲み続けることに相当します。乳糖は生乳に5%程度含まれていて、それが200ミリリットル当たり5グラムのガラクトースに、ほぼ変換されるからです。

 仮に動物実験と同じことが人間にも当てはまるとすると、1日コップ1~2杯程度の牛乳を飲んでいても、老化が促進されるということになり、これは由々しき事態で、今の牛乳の摂取についての考え方を、根底から見直さなければならない、ということになります。

 しかし、本当にそれは人間においても当てはまるような事実でしょうか? それは今のところ明らかではありません。

石原藤樹/北品川藤クリニック院長

石原藤樹/北品川藤クリニック院長

北品川藤クリニック院長。医学博士。1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科大学院卒業。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任
北品川藤クリニック

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