スウェーデンの疫学データのインパクト(2014年)
2014年のブリティッシュ・メディカル・ジャーナルという医学誌に、乳製品と寿命や骨折との関係を調べた論文が発表されました(註1)。そこでは、スウェーデンにおける、男性と女性の2つの大規模な疫学データを活用して、牛乳の摂取量と生命予後及び骨折リスクとの関連性を検証しています。女性は6万人以上、男性は4万5000人以上が対象となっていて、女性は20年以上、男性も10年以上という長期の経過観察を行った、これまでで最も大規模な疫学データです。
結果はビックリするようなもので、牛乳を1日コップ3杯以上飲んでいる女性は、コップ1杯未満しか飲まない女性の倍近く、亡くなる人が多かったのです。男性では違いはもっとわずかですが、やはり牛乳をたくさん飲む人は、飲まない人よりも亡くなることが多いという結果になっていました。
骨折の起こりやすさについても、女性では牛乳をたくさん飲んでいる人のほうが、少ない人よりもやや骨折が多い、という結果になっていました。なかでも多かったのは股関節の骨折です。男性においては骨折と牛乳の摂取量との間には関係は見られませんでした。
そして、乳酸飲料やヨーグルト、チーズのような乳製品では、牛乳のような死亡や骨折との関連は認められませんでした。
つまり、特に女性で牛乳を1日2杯以上飲んでいると、病気で亡くなる人や骨折をする人が増えるというショッキングな結果です。その一方で、発酵食品であるヨーグルトや乳酸飲料、チーズではそうした結果は出ていません。
牛乳は本当に骨折予防に良いのか?
スウェーデンのデータでは、牛乳を飲むことにより骨折が増えています。骨に良いはずの牛乳でどうしてそうした結果が出てしまったのでしょうか。
実は10代で牛乳をたくさん飲むと、骨の量は増えるのですが、身長も伸びるので、結果として大人になってからの重心が高くなり、それが股関節の骨折を起こしやすくする、というデータが存在しています(註2)。もちろん、カルシウムやビタミンDが多く摂れるというメリットもあるのですが、そればかりではないのです。