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南清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」

安物の合成清酒は「まがいもの」で頭痛も!ただの大量の工業的添加物とアルコールの混ぜ物

文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事

合成清酒は化学物質だらけ

 さて、なぜ合成清酒をおすすめできないのかといえば、そのつくり方に原因があります。

 そもそも日本酒は、原料である米が持つ澱粉を麹がブドウ糖に分解し、それを酵母がアルコール発酵させることによってできます。その過程でさまざまな技術が加えられ、その巧拙によって酒の出来具合が違ってきます。毎年、収穫する米は同じ味ではなく、気温も湿度も違います。だから、できあがるお酒が違う味になっても当然なのですが、プロはできるだけ同じ味に仕上げたいと考えます。それを成し遂げるための技術こそが、プロたらしめるのです。

 一方、合成清酒は工業製品的につくられたブドウ糖を大量に添加し、ときには高果糖コーンシロップ(果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖)も添加します。これは、日本酒が本来持っている淡い甘味とは似て非なるもので、おいしい酒を飲み慣れた人にとっては不快な味と感じるようです。

 また、日本酒には酵母が成長する過程で生まれる、さまざまなアミノ酸が含まれており、それがいわゆる「うま味」になっているわけですが、合成清酒はそれをグルタミン酸ナトリウムなどの合成されたアミノ酸を使ってごまかしています。

 さらに、かすかに感じる酸味も日本酒の魅力のひとつですが、合成清酒ではこれも乳酸、またはコハク酸などで代用し、製品を安定させるためにポリリン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、酢酸ナトリウムなどの化学物質も使われます。

 お酒は嗜好品ですから、それぞれの人が自身の価値観に基づいて購入して楽しめばいいと思います。ただ、飲んだ日本酒に醸造用アルコールが加えられていると、後で頭が痛くなるという敏感な人もいるので、選ぶ時には注意が必要です。

 料理教室で料理を教えていると、料理酒について質問されることがよくあります。「どんな料理酒を選べばいいか」との質問に対して筆者は、「純米酒がいいです」とお答えしています。

 一般的な料理酒には2~3%程度の塩分が加えられています。飲用不可となっており、酒税法の適用対象外です。しかも、もともとあまりいい酒は使われません。したがって、安く販売されています。筆者は、飲むのも料理に使うのも純米酒です。吟醸酒を料理酒として使っても、ただ甘味がつくだけで深みは出ません。おそらく料理に使うには、米を削りすぎているのでしょう。つまり、料理に奥行きをもたらす雑味が少なすぎるのだと思います。

南清貴

南清貴

フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会
代表理事。舞台演出の勉強の一環として整体を学んだことをきっかけに、体と食の関係の重要さに気づき、栄養学を徹底的に学ぶ。1995年、渋谷区代々木上原にオーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を開業。2005年より「ナチュラルエイジング」というキーワードを打ち立て、全国のレストラン、カフェ、デリカテッセンなどの業態開発、企業内社員食堂や、クリニック、ホテル、スパなどのフードメニュー開発、講演活動などに力を注ぐ。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した新しいタイプの創作料理を考案・提供し、業界やマスコミからも注目を浴びる。親しみある人柄に、著名人やモデル、医師、経営者などのファンも多い。

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