プラスチックごみの削減が叫ばれるようになって久しい昨今、「無印良品」(以下、無印)はレジ袋の有料化が始まった7月1日に「自分で詰める水」サービスの提供を開始した。
「自分で詰める水」とはマイボトルの携帯を習慣化し、ペットボトルのごみを減らすことを目的とした取り組みだ。店舗で給水できるのは高価なミネラルウォーターなどではなく、あくまで水道水をろ過した水だそうだが、環境問題への意識が高い有意義な取り組みといえるのではないだろうか。
さて、この計画において、無印は3つのシステムを用意している。
まずは、一連のプロジェクトの要となる「給水機」の設置。無印の一部店舗では7月1日より無料で水がもらえる給水機を設置している。この給水機はマイボトルを持っていれば、誰でも利用が可能だという。
次に、「自分で詰める水のボトル 容量330ml」(税込190円)の販売。こちらは、繰り返し使えるようにつくられた、空のボトルだ。
最後に、「水」アプリ。無印が配信しているこのアプリは、給水をするごとにアプリに記録することで、削減できたペットボトルの量・CO2排出量、すなわち環境への貢献度を数字にして教えてくれるというのである。
この3つのシステムを導入した無印のサービスは、リリース直後からSNSで話題になり、「こんないいサービスありなんか…」「エコですね」「夏場はよく水飲むので、助かります」など、肯定的な意見が集まっていた。そこで今回は、女性ライターである筆者が1週間「自分で詰める水」サービスを利用。その使い心地などの感想や生活への影響を分析して忖度なくお伝えしたい。
無印の「水ボトル」を購入――在庫切れ続出で売れ行きは好調の模様
まず、「自分で詰める水のボトル」を入手すべく最寄りの無印店舗に向かったが、在庫を切らしているとのことだった。スタッフに周辺の店舗を調べてもらったところ、在庫があったのは4店舗中1店舗のみ。どうやら、売れ行きはかなり好調のよう。
「自分で詰める水のボトル」は飲み口付近が細くなっており、キャップは黒い。ボトルには、水色の字で「水」とプリントされている。素材感はペットボトルに近いが、市販の飲料に使われているペットボトルよりは硬い。やはり、190円で販売しているだけあって、作りも頑丈だ。
そして、「自分で詰める水のボトル」は飲み口が大きい。通常のペットボトルと比較すると、一回りは大きいように見える。無印いわく、繰り返し使うことを見越して洗いやすい大きさにしたそうだ。
そして、なんといってもスリム。ペットボトルと比較すると、その差は一目瞭然。通勤用リュックのポケットにもかさばらず入れることができたので、水筒よりも手軽に持ち歩けそうだ。
いよいよ無印で給水、コロナ対策にも抜かりないので安心して使えた
現在は一部店舗で給水機が導入されており、今後、順次拡大していく予定なのだという。筆者は自宅周辺の3店舗に足を運んでみたが、そのすべての店舗に給水機が設置されていた。
また、現在は新型コロナの影響で、セルフサービスを中止している店舗も多い。筆者が訪れた3店舗中2店舗はセルフサービスを中止していたため、スタッフに給水をお願いする場面もあった。
水の温度は常温水か冷水か、量は120ml、180ml、300mlの3段階から選べる。300ml給水するとボトルの9分目にまで達した。前述した通り、中身は水道水をろ過した水なのだそうで、とびきり美味しいわけでもないが不味くもなかった。夏場の水分補給には十分といえるだろう。
「水」アプリに記録、貢献度が数字でわかるので向上心が芽生える?
その後、「水」アプリに給水を記録する。「水」アプリはあくまでもプラスアルファという位置付けな気もするが、今回は無印が提供するサービスを存分に楽しむために使ってみることに。給水後にボタンをタッチするだけなので、煩わしさは感じない。
給水を報告すると、給水によって削減できたペットボトル、C02の量とこれまでの給水料が表示される。マイボトルがエコにつながると言われ始めたのは最近のことではないが、イマイチ実感が得られなかったという人も少なくないだろう。しかし、この「水」アプリに成果を数字で教えてもらえれば、ゲーム感覚でエコに励むことができるのではないだろうか。
ちなみに、「水」アプリでは給水機のある店舗や図書館などの給水ポイントも教えてくれる。ザッと見たところ、無印の店舗以外だと図書館や区民センターなど公営の施設が多かったので“オフィシャルに給水可能なスポット”に限定されていると思われる。
1週間体験の率直な感想…ボトルは使い心地ヨシ、給水機もありがたい
筆者はこのボトルとともに1週間を過ごした。基本的には、自宅の水道から水道水を入れて使用することが多かったが、カジュアルに持ち歩けるこのボトルはとても便利だと感じた。
これまでは、散歩や銭湯などのちょっとした“水が欲しくなるであろうシーン”でも、水筒を用意するのは気が重く、結局持って行かないことも。しかし、このボトルはスリムで軽く、水を入れるだけで準備が整うため、どんなシーンにもライトに持ち込むことができる。
330mlという量も最初は少ない気がしていたが、結局無駄なく飲みきれるのはこれくらいなのだろう。長時間、外出をした日は足りなくなったこともあったが、本来、水をつめるためのボトルのため、恥ずかしがらずに堂々と水道水を入れることができた。大人にとっては、ここも重要なポイントではないだろうか。
給水機は、そもそも店舗がないと利用できないため、欲しいときにすぐ給水できると限らない点がネックだと感じた。最終的に、無印の給水機を使ったのは合計4回。筆者の住んでいる地域の最寄り駅には無印があったので、電車に乗って出かける前には給水していたが、それでも4回だ。多くの人はこれよりも利用頻度が少なくなると考えるのが自然だろう。しかし、これからの季節、外出先で給水機のある店舗に出会えればかなり助けられるはず。
「水」アプリは、本当にプラスアルファな存在だと感じた。給水スポットに関しては、無印の店舗以外であれば、図書館などの公営施設しか教えてくれないため、地域によっては半径10km圏内に給水スポットがひとつも出てこないこともザラにある。また、給水の記録を忘れてしまいそうになることもしばしばあった。しかし、「水」アプリ利用者の合計削減量が表示されるのは、気持ちのいい一体感を感じさせ、精神的な満足度は高めてくれると感じた。
気が向いたらダウンロードしてみていただきたい。
結果的に、給水機も「水」アプリも便利と感じるかどうかはタイミング次第といえるだろう。しかし、「自分で詰める水のボトル」は自信を持っておすすめできる。このボトルのおかげで、出先で水分補給を必要としても、泣く泣くペットボトル飲料を購入することがなくなったからである。ぜひ一度、お手に取ってみていただきたい。
(取材・文=福永全体/A4studio)