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岡田正彦「歪められた現代医療のエビデンス:正しい健康法はこれだ!」

ペットボトルの水、プラスチック汚染との調査結果…広く食品や空気も汚染、体内に侵入

文=岡田正彦/新潟大学名誉教授
ペットボトルの水、プラスチック汚染との調査結果…広く食品や空気も汚染、体内に侵入の画像1「Gettyimages」より

 ウミガメの鼻にプラスチック製のストローが刺さった写真は衝撃的でした。いまやプラスチック製品による海洋汚染は広く知られるところですが、被害に遭っているのはウミガメやカモメだけでなく、われわれ人間も例外でないという話を紹介しましょう。

 米国ニューヨーク州立大学の研究チームが、「ミネラルウォーターはプラスチックの微粒子で汚染されている」との驚きの調査結果を発表しました【注1】。米国、インド、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、レバノン、インドネシア、中国の9カ国で製造されているミネラルウォーター11銘柄を分析したところ、93パーセントのボトルから1本当たり最大1万個の微粒子が検出された、という内容でした。微粒子の正体は、ポリプロピレン、ナイロン、PET(ペットボトルの材料)などのプラスチックでした。

 これらはマイクロプラスチックと呼ばれます。大きさは6.5~100ミクロンだったそうですが、なかには100ミクロンを超えたサイズの微粒子もあり、その多くはペットボトルのキャップの破片でした。ちなみに20歳前後の男性の毛髪の直径が85ミクロンほどです。

 論文では、調べた方法も仔細に報告されていて、プラスチックに付着しやすい特殊な蛍光色素をミネラルウォーターに加え、発光する粒子を顕微鏡でカウントしたのだそうです。2人の研究者が同じサンプルを別々に調べ、結果が一致していたことを示すグラフも丁寧に提示されていました。

 あるミネラルウォーターの製造会社は、この論文にただちに反応し、「異なる地域で発売されている6本について分析をしてみたが、どのボトルにも微粒子はほとんど見つからず、せいぜい5個以下だった」とメディアの取材に答えたとのことです【注2】。

 また、その会社は「微生物などを間違ってカウントしたのではないか」と批判していたそうですが、筆者の経験からいえば、微生物と人工物を顕微鏡で見間違うことはありえませんし、もし本当に微生物が混じっていたのだとすれば、そのほうがよほど怖い話ではないでしょうか。

地球環境全体が汚染

 マイクロプラスチックの汚染はかなり深刻で、海産物のみならず、すでに肉、ビールなどの食品や、さらには空気にまで汚染が進んでいます。これらの実態をまとめた英国の研究者は、年間、数万個のマイクロプラスチックが人々の体内に入り込んでいる計算になると述べています【注3】。ニューズウィーク誌は、さらに興味深い実験結果も紹介していて、食卓に線維状のマイクロプラスチックを入れた皿を載せておいたところ、食事中に平均114個が空中を舞って料理皿に移っていたそうです【注4】。

 これらの事実が示しているのは、ミネラルウォーターだけが問題なのではなく、地球環境のすべてが、すでにマイクロプラスチックで濃厚に汚染されていて、誰もが逃れることのできない深刻な事態になっているということです。

 気になるのは、マイクロプラスチックが体内に入るとどうなるのかです。プラスチックは人工的に合成された樹脂の総称ですが、同じ構造の繰り返しでできていているため、日光と酸素のもとでゆっくりと分解が進み、断片化し、やがて微粒子となっていきます。しかし、その構造上、プラスチックはいくら小さくなってもプラスチックのままであり、そのことが人体にどのような影響を与えるのかということになります。

 毒物が専門の米国のある研究者は、「マイクロプラスチックが健康に与える影響はまだ不明だが、胃腸や肺に炎症を起こしたり、脂質代謝に悪影響を及ぼしたり、あるいは表面に発がん物質などが付着している可能性もある」と述べています【注5】。

 プラスチックが普及した1960年代、「偉大な未来が待っている」と述べた研究者がいたそうですが、実際には恐ろしい未来がすぐそこまで来ているのかもしれません。
(文=岡田正彦/新潟大学名誉教授)

参考文献
【1】Mason SA, et al., Synthetic polymer contamination in bottled water. Front Chem. doi: 10.3389/fchem.2018.00407, 2018.
【2】Georgiou A, Microplastics: bottled water may contain thousands of pieces of plastic waste. Newsweek, March 15, 2018.
【3】Catarino AI, et al., Low levels of microplastics (MP) in wild mussels indicate that MP ingestion by humans is minimal compared to exposure via household fibres fallout during a meal. Environ Pollut 237: 675-684, 2018.
【4】Georgiou A, Microplastics: every meal you eat may contain more than 100 pieces of plastic, new study finds. Newsweek, April 4, 2018.
【5】Kontrick AV, Microplastics and human health: our great future to think about now. J Med Toxicol 14: 117-119, 2018.

岡田正彦/新潟大学名誉教授

岡田正彦/新潟大学名誉教授

医学博士。現・水野介護老人保健施設長。1946年京都府に生まれる。1972年新潟大学医学部卒業、1990年より同大学医学部教授。1981年新潟日報文化賞、2001年臨床病理学研究振興基金「小酒井望賞」を受賞。専門は予防医療学、長寿科学。『人はなぜ太るのか-肥満を科学する』(岩波新書)など著書多数。


岡田正彦

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