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渡辺雄二「食にまつわるエトセトラ」 

ゼロカロリーの飲料やノンアルビール、合成甘味料で脳卒中・認知症の確率上昇との研究結果

文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト
ゼロカロリーの飲料やノンアルビール、合成甘味料で脳卒中・認知症の確率上昇との研究結果の画像1「Getty Images」より

「健康によさそう」「カロリーが低そう」「清涼感がある」といったイメージから、ここ数年人気が高まっている透明系飲料。これまではジュースやコーヒー、紅茶飲料などを透明にしたドリンクが主流でしたが、最近、透明なコーラやノンアルコールビールまで登場しました。

 しかし、安全性の不確かな合成甘味料を含む製品が多く、かえって不健康を招く恐れがあるので、注意が必要です。

 コーラといえば、あの独特の褐色の色が特徴ですが、その色を無くして透明にした製品が今年になって売り出され、テレビでも盛んにCMが流されています。また、透明のノンアルコールビール(ビールテイスト清涼飲料)も、ビール独特の黄金色を無くして透明にしています。容器は缶ではなく、ペットボトルです。

 透明なコーラやノンアルコールビールが売り出された理由のひとつは、仕事中でも人目を気にせず飲むことができるという点にあるようです。いかにノンアルコールとはいえ、他の社員を前にして飲むのは気が引けるでしょう。また通常のコーラは、「体に悪そう」というイメージを持つ人も多いので、健康志向が高まっている現在、やはり人目が気になる人もいるでしょう。

 それが、透明のドリンクなら、まるでミネラルウォーターを飲むかのように、人目をはばからず口にすることができるのです。

 ところで、「透明のコーラって、どうやってつくるの?」と不思議に思っている人もいるかもしれませんが、意外と簡単につくれるのです。あの独特のコーラ色は、食品添加物の一種のカラメル色素によるものです。したがって、カラメル色素の使用をやめることで、透明のコーラがつくれるのです。

 ほかに、通常のコーラにも含まれているカフェイン、酸味料、そして独特の香りのする香料を加え、ゼロカロリーのコーラに使われている合成甘味料のスクラロースとアセスルファムKを加えれば、透明なコーラの出来上がりです。なお、酸味を増すためか、レモン果汁を加えています。糖類は使われていません。

 ノンアルコールビールもカラメル色素を使って黄金色を出しているので、それを抜くことで透明のノンアルコールビールをつくることができます。そのほかの原材料は、苦味料や酸味料、香料、アセスルファムKなど、通常のノンアルコールビールと同じです。なお、なぜかホップは含まれていません。

 カラメル色素は、非常に多くの食品に使われている添加物であり、カラメルⅠ~Ⅳの4種類があります。そのうちのカラメルⅢとカラメルⅣの場合、色素の原料にアンモニウム化合物が使われています。そして、色素をつくる際の熱処理によって、それが4-メチルイミダゾールという物質に変化するのですが、アメリカの動物実験で、4-メチルイミダゾールに発がん性のあることが認められています。

 通常のコーラやゼロカロリーのコーラにはカラメル色素が使われているため、4-メチルイミダゾールが含まれています。一方、透明のコーラには、カラメル色素は使われていないので、4-メチルイミダゾールは含まれません。したがって、その点では安心できます。

合成甘味料の安全性は不確実

 ところが、合成甘味料のスクラロースとアセスルファムKが使われているため、それが問題となります。通常のコーラには、砂糖や果糖ぶどう糖液糖が多く含まれているため、「糖類の割合やカロリーが高い」という批判がありました。そこで登場したのが、糖類の代わりにスクラロースとアセスルファムKを使ったゼロカロリーのコーラであり、透明のコーラも同じ甘味料を使っているのです。

 スクラロースとアセスルファムKは、体内で代謝されません。つまり、分解されることなく、エネルギーに変換されません。そのため、ゼロカロリーなのです。

 しかし、スクラロースは有機塩素化合物の一種であり、ネズミを使った実験の結果から、免疫力を低下させる心配があります。またアセスルファムKは自然界に存在しない化学合成物質であり、イヌを使った実験の結果から、肝臓にダメージを与えたり、免疫力を低下させる心配があります。

 さらに、これらの合成甘味料は、脳卒中や認知症のリスクを高める心配もあるのです。2017年4月、アメリカのボストン大学などの研究グループが、合成甘味料を含むダイエット飲料を飲む習慣のある人は、飲まない人に比べて脳卒中や認知症になる確率が高まるという調査結果を発表しました。

 同グループでは、マサチューセッツ州のある町で、住民の健康について継続的に調べているのですが、脳卒中は45歳以上の男女2888人、認知症は60歳以上の男女1484人を対象に、10年以内に脳卒中になった97人と認知症になった81人について、食生活などとの関連を分析しました。

 その結果、合成甘味料入りのダイエット飲料を1日1回以上飲んでいた人は、まったく飲まない人よりも脳卒中や認知症になる確率が約3倍も高いことがわかったのです。

 ちなみに、透明のノンアルコールビールにも、カラメル色素が使われていないので、4-メチルイミダゾールは含まれていません。しかし、アセスルファムKが使われています。

 また、サイダーやレモンスカッシュなどの透明ドリンクも、スクラロースやアセスルファムKが使われている製品があります。

 スクラロースが日本で認可されたのは1999年、アセスルファムKは2000年であり、使われ始めてからまだ20年もたっていません。今、まさに私たちの体で、人間にどのような影響が出るか調べられているような状態なのです。

「健康によさそう」「糖類やカロリーが少なそう」ということで人気が高まっている透明系飲料ですが、その裏には危険性も潜んでいるのです。原材料をきちんと確認して、安全性の不確かな合成甘味料を含む製品は避けたほうがよいでしょう。
(文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト)

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

1954年9月生まれ。栃木県宇都宮市出身。千葉大学工学部合成化学科卒。消費生活問題紙の記者を経て、82年からフリーの科学ジャーナリストとなる。全国各地で講演も行っている

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