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受動喫煙で肺がんリスク、がんセンター「有意な関連」にJTが真っ向反論「有意ではない」

文=編集部
受動喫煙で肺がんリスク、がんセンター「有意な関連」にJTが真っ向反論「有意ではない」の画像1「Thinkstock」より

 昨夏、「受動喫煙肺がんリスク」をめぐって、国立がん研究センターと日本たばこ産業(JT)が真っ向から対立する事態が起きた。

 事の発端は、8月31日にがんセンターがホームページ(HP)上に掲載した「受動喫煙による日本人の肺がんリスク約1.3倍」という発表だ【※1】。それによると、「受動喫煙のある人は、ない人にくらべて肺がんになるリスクが約1.3倍で、国際的なメタアナリシスの結果と同様」とされている。

 また、この研究結果に伴い、がんセンターは受動喫煙における科学的根拠に基づく肺がんのリスク評価を「ほぼ確実」から「確実」にアップグレード(日本人を対象)。がん予防法を提示しているガイドライン「日本人のためのがん予防法」においても、他人のたばこの煙を「できるだけ避ける」から「避ける」に修正し、受動喫煙の防止を明確な目標として提示している。

 今回がんセンターが用いたのは、複数の論文を統合・解析する「メタアナリシス」という研究手法だ。426本の研究から9本の論文を抽出して相対リスクを算出した結果、「日本人を対象とした疫学研究のメタアナリシスにおいて、受動喫煙と肺がんとの間に統計学的に有意な関連が認められた」としている。

 これに反論したのがJTだ。JTは同日、HP上に「本研究結果だけをもって、受動喫煙と肺がんの関係が確実になったと結論づけることは、困難であると考えています」という発表を小泉光臣代表取締役社長の名義で掲載【※2】。「受動喫煙を受けない集団においても肺がんは発症します」と主張すると同時に、「今回の選択された9つの疫学研究は研究時期や条件も異なり、いずれの研究においても統計学的に有意ではない結果を統合したものです」とがんセンターの研究手法に疑問を投げかけている。

 それを受けて、がんセンターは9月28日、再びHP上に「受動喫煙と肺がんに関するJTコメントへの見解」を掲載した【※3】。JTの反論に対して「科学的アプローチに対し十分な理解がなされておらず、その結果として、受動喫煙の害を軽く考える結論に至っている」「当センターとはまったく異なる見解」として、JTのコメントを引用するかたちで詳細な反論を展開している。

喫煙者の健康障害は万人が認める事実

 国の研究機関と企業が反論をぶつけ合うという異例の展開になっているが、はたして受動喫煙は肺がんのリスクを高めるのか、そうでないのか。新潟大学名誉教授で医学博士の岡田正彦氏に聞いた。

「非常に興味深い論争ですね。過去にも、『喫煙で健康を害することはあるか』というテーマで、同じような論争が繰り広げられてきました。対立の構図は、『疫学』と呼ばれる分野の研究者とたばこ企業とのバトル、の一言に尽きます。

 たばこの害を否定したい企業側の研究者と疫学の研究者との間で、長い間、意見が合わなかったのです。しかし、たばこをめぐる多くの裁判記録から、企業側研究者が書いた論文に捏造があったことが暴露されるなどの不祥事も相次ぎ、喫煙者の健康障害は確固たる事実として万人が認めるところとなっています。

 受動喫煙のほうにも同じ問題が潜んでいるようで、これまで世界中で発表されてきたデータに大きな乖離がありました。女性に着目して、家庭内や職場で他人が吸ったたばこの煙で肺がん死亡が増えるかどうかを調べた研究データが多いのですが、『関係あり』と結論した論文と『関係は見いだせなかった』とした論文が相半ばしていたのです」(岡田氏)

「受動喫煙で肺がん死亡増」は世界の認識

 今回のがんセンターとJTのバトルについて、一概に勝敗を決められるものではないが、どのように見ているのだろうか。

BusinessJournal編集部

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