この前、私が元夫を引き合いに出しながら「最高の伴侶と結婚する方法」を投稿しているSNSが懐かしくてポップアップして、お茶を吹いた。いかんせん仕事が恋愛ライターだと、持論を語るときの根拠に夫、彼氏は登場せざるを得ない。
しかし、いくら将来を誓おうが別れることも当然あるし、円満にお別れできるとも限らない。それでも当時の私が残したドヤ投稿は燦然とインターネットの海を漂うのだ。
気軽な投稿がデジタルタトゥーになると想定できているか?
私の場合、恋愛について書くのが仕事なので「もう仕方がない」と笑うしかない面もある。むしろ積極的にリツイート(再拡散)して世間に笑いでも提供しようじゃないの。ごめんなさいね、来世ではちゃんとしますんで。
……で、問題は「そうじゃない人」だろう。つまり、恋愛ライターでもなんでもない、一般人がプライバシーを軌跡として残していくリスクだ。
mixi、Facebook、Twitter、Instagramといった有名どころのSNSは、誰もが投稿した記憶を残している。複数のアカウントを持っている人もいるだろうし、なかには始めてすぐ放置したアカウントもあるだろう。さらに、最近のSNSはFacebookやLINEのIDがあればログインできる。自分でポチポチ個人情報を入力する手間がないから登録は簡単だが、その後「登録していたこと」すら忘れやすい。
ざっと有名どころを並べてもLinkedIn、Wantedly、17LIVE、TikTok、Mirrativ……。このうちいくつに見覚えがあるかは人によるとしても、簡単に登録できるサービスは増えていく。そして、そこに残した投稿がデジタルな刻印として残される。
簡単に辿れてしまった「あの子」の人生
こんなことを書いているのは、私がある女性の名前でGoogle検索したからだ。誠に陰湿極まりないが、それははるか昔に付き合った男の浮気相手である。なんでそんなものを検索したんだと言われても、「ふと脳裏に浮かんだから」としか言いようがない。私の性根が全部悪い。
そして、恐ろしいことにインターネットを5分さまよっただけで、その女性が今どんな仕事をしていて、どんな面構えで、最近どんなレストランへ行き、どんな暮らしぶりかまで大体わかってしまった。一応言っておくが、私はネットストーカーとして優れているわけでもない、普通のアラサーである。
そんな人間がたった5分、キーボードをカタカタしただけで、個人情報がこれだけわかってしまうとは。当時の浮気相手女性は、この記事に気づいたら全SNSを消したほうがいいと思う。と、加害者(?)が心配するくらい情報ダダ漏れだったのだ。
デジタルタトゥーが残るが、それを愛して生きる
このご時世、どこまで密やかに生きてもデジタルタトゥーは残る。友だちが撮影した集合写真、会社の業務としてYouTubeへアップロードした商品説明動画、ちょっと気が向いて登録したレストラン予約アプリ。
すべてを消し去って生きることなんて、今後はできない。自分の記録は残る前提で生きていくしかない。これまで実家の押し入れに隠せていた恥ずかしい日記だって、今後はSNSの投稿としてさまよう。そして「このサービスに登録した10年前を思い出してみましょう!」なんて軽やかポップアップとともに、黒歴史が飛び込んでくるのだろう。
デジタルタトゥーは残るもの、そして共に生きていくしかないものだ。せめて数少ない友人がこれ以上減らないよう、笑える程度のヤンチャをして生きていこう。そして合法・違法の線引きくらいはせめてキッチリ引いておこう。やっぱりコンビニの冷凍ケースには入らないほうがいい(2013年の炎上)。ロックでもないし、友だちは失いそうだし。
と、言いつつ安易にYouTubeライブに参加した体重マッドマックスの自分がいる。デジタルタトゥーを残す自分のポンコツ具合も含めて、どうやらまるっと愛するしかないようだ。
(文=トイアンナ/ライター)